ヨシムラ
今に続くニンジャZX-10Rは11年型から熟成が図られていて、21年モデルでは機能的なモデルチェンジを受けている。空力特性の追求が開発のメインテーマだったという21年型は、サーキット性能を向上させながらも、誰にとっても乗りやすいマシンに進化していた。
21年型がテーマとしたのは空力特性の向上だった
ジョナサン・レイのライディングでスーパーバイク世界選手権を6連覇しているカワサキは、7連覇に向かって抜かりはないようだ。
21年型ニンジャZX-10R(以下、10R)の開発では、6連覇の実績から、車体は刷新する必要はないと判断した。ホモロゲーションモデルとなるニンジャZX-10RRについては、レースで有利なように上限回転数を引き上げる改良をほどこすも、スタンダード型となる10Rはエンジンを継承した。メインテーマとなったのが空力特性の向上であったという。
21年型は基本フォルムが明らかに異なる。私には従来型の方がセクシーに感じるが、新型はいかにも空力特性の追求から生まれてきたとの印象だ。実際、ダウンフォースが17%向上、空気抵抗は7%低減している。
試乗前にオンラインで行なわれた技術説明会において、21年型の印象を聞かれた設計担当者は「走り出した途端、軽快であることがわかります」と答え、またテストライダーは「Uターンしやすいんです」とも。
トレールが少々小さくなっただけでそこまで違うんだろうか。ハンドル位置が10㎜前方に移動して、切れ角一杯でのハンドルの燃料タンクとのすき間が大きくなっても、あえて言うほどほどのことでもないだろうに…。正直言って、そう思った。
でも、開発者の言う走行性能の変化が、ここまで空力の恩恵によるものだとは、想像の域を超えていた。
熟成されたメカニズム
21年型は空力特性の向上をメインテーマとして改良されたが、車体もそれに合わせて改良がおよんでいる。ピボット軸は1㎜低く、フロントフォークのスプリングは少々ソフトになり、フォークオフセットは2㎜大きく設定された。ディメンションは、スイングアーム長が8㎜伸び、ホイールベースは10㎜の延長となった。また、アンダーブラケットのクランプ幅を拡大し、剛性が高められている。ミッションはワイドレシオ化されている。さらには、クルーズコントロールやスマートフォンとの接続性を高めたTFTメーターパネルを採用するなど、一般走行での利便性も留意されている。
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和歌山 利宏
バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。