ヨシムラ
2020年9月10日(木)から発売を開始するNinja ZX-25R。エンジンやフレームなどブランニューパーツ、そして上位排気量車の高性能モデルと同等の各種装備を採用するなど、250㏄スポーツモデルに新しい展開を吹き込む意欲作として高い注目を集めている。そのNinja ZX-25Rの各部について詳細に解説していこう。
ハイレベルなシャーシはサーキットから街乗りまで幅広く対応
本項では車体まわり、つまりはシャーシについても解説していこう。まずはバイクにとって文字どおりの骨格となるフレームからだ。
フレームの構造にはNinja ZX-25R用に新設計した超張力鋼で作られたトレリスフレームを採用。このトレリスフレームはスーパーバイク世界選手権参戦マシンNinja ZX-10RRの設計思想とシャーシデザインをフィードバックしたモノで、車体の左右バランスにも細心の注意を払っているとのこと。
スーパースポーツモデルのフレームは車体剛性を思い切り高めることを主眼とした構造だ、と思っている人もいるかもしれないが、それも今や昔話。そしてパイプフレームだから剛性が低いと考えるのもすでに過去の話。カワサキのトレリスフレームは異なる径と厚さを持つパイプと、モナカ形状のスイングアームピボットセクションとの組み合わせで構成されているが、先進の解析技術を駆使することで剛性と柔軟性をバランスさせている。その有用性は同様の構造のフレームを採用するNinja H2シリーズでも証明されているとおりだ。
さらにNinja ZX-25Rのフレームは重心位置やスイングアームピボットの位置、エンジン軸、キャスター角などの主要寸法は、Ninja ZX-10RRの設計思想を由来としている。“レースモデルは乗りやすさがないと速く走れない”と言われてすでに久しい。その先進技術が注ぎ込まれているフレームには、おそらく乗りやすさも追求されているに違いない。
そのフレームに装着されるのは250㏄クラスに初採用となるショーワ製SFF-BP倒立フロントフォークと、ホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション。その構成で高い路面追従性を追求する。
スイングアームはフレームと同じく超張力鋼のロングタイプ。湾曲形状とすることでバイクの前後重量バランスを最適化させ、軽快さと安定感とをバランスさせたハンドリングを追求する。またロングスイングアームによってサイレンサーを車体中央寄りに配置させることができるので、マスの集中化とスポーティでスタイリッシュな外観構築にも寄与している。
こういった構成パーツとの相乗効果で、スポーツライディングやサーキット走行ではスーパースポーツハンドリング性能を発揮。結果として、Ninja ZX-25Rのコーナー進入時の特性は、Ninja ZX-10RやNinja ZX-6Rと酷似したものになっており、サーキットにおけるフルバンク状態においても、ライダーはすぐれたフィードバックと良好な接地感を体感できるとカワサキは解説している。それでいてコーナーリング時には余裕をライダーに与え、ほかのNinja ZXシリーズと同様に、スポーツライディング時においてライダーが自身の限界を探れる状態を保持できるとのことだ。
なお、“スーパースポーツのハンドリング”と解説されると“そんな鋭いハンドリングだと神経質になるのでは…”とか“高荷重下でないと機能しないような足まわりなのか…”と不安を感じる人もいるだろう。しかしNinja ZX-25Rはレース専用車両ではない。サーキットレベルの高レベルなハンドリング獲得のみならず、街中での扱いやすさとの両立を目指している。カワサキは『街乗りでの扱いやすさが確保されている』と解説しているので、どちらかと言われれば街乗りでの扱いやすさを最優先ではなく共存を目指したのだろうから、スポーツ寄りなキャラクターではあるのは間違いないだろうが、その点は近年のカワサキはどんなにハイパフォーマンスだろうとハイパワーなモンスターマシンだろうとも、極低回転域から非常に扱いやすいマシンを送り出し続けていることから、ユーザー側がとくに神経質になることはないだろう。
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四ッ井 和彰
カワサキイチバンを運営するクレタで各出版物の編集部に長年所属。カワサキバイクマガジンやカスタムピープルでは編集部員として記事執筆や写真撮影などを担当した。カワサキ歴は2000年代後半になってからGPZ1000RX、KSR-Ⅱ、GPZ600Rなどを乗り継いできた遅咲きの1972年生まれ。