2008年モデル ZZR1400(ZX1400C) インプレッション

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ヨシムラ

最高のパフォーマンスを過剰にひけらかす時代は終わった。絶対性能を高めながらも、人にやさしく楽しいと思わせる作り込みが欠かせない。ZZR1400に課せられた使命は、はたしてまっとうできたか。

あっけないほどに全身素直なバイク

存在する理由。それも強烈に存在する理由。ZZR1400に乗ると、かならずといっていいほど、この言葉を思い浮かべる。

世界最速という欲望のためだけに生まれてきたのではなく、世界最速を求め続けてきたカワサキの過去から現在に至る歴史そのものが、このZZR1400に凝縮されているといっても過言ではない。

たとえば世界最速のために空力の先端技術をフォルムに反映させながら、独自のデザインを盛り込んでいる。風が創り上げるデザインは、どこかで他のバイクに似てしまいやすいだろう。しかし、カワサキは他のどれにも似ていないことが絶対条件であったはず。なぜならカワサキこそが世界最速の歴史をもっとも長く誇っているからだ。

たとえば6眼式ライトやエッジをつけたミラーがこれを明確に表している。最速実現のために設定したフロントカウル先端の吸気口も、パワー創出に欠かせない機能。ZZR1100のC型、D型、そしてZX-12Rの初期型・後期型の進化型であり、同時にスーパースポーツZX系モデルの規範形状となっている。カワサキ技術の象徴的な部位であり、集大成でもあるのだ。

2008年モデル ZZR1400(ZX1400C) インプレッション

そして環境適応のためにZZR1400は2008年モデルへと進化した。ユーロ3規格をクリアしながらUS・EU仕様が最高出力が190㎰から193㎰に引き上げられた。

最高出力の3㎰アップなど簡単に実感することはできないが、吸排気系の改良によって低中速トルクが若干アップしていることは、一般道を常識の範囲内で走るにはありがたい改良といえる。とりわけ4,000~6,000rpmでのトルクの厚みが出たことで、深いバンク中のバランス補正に大きく役立つ。

もともと低回転域ではトルクを抑え気味にして扱いやすくしていたのだが、その扱いやすさをそのままに6,000rpmまでのつながりを良好にしているというわけだ。

初めてのワインディング。それも見通しの悪いタイトなコーナーの連続やスリッピーな路面でこの味付けは大きく役立つ。

もちろん6,000rpmを超えたZZR1400は尋常ではないダッシュ力を見せ始める。安易に1万rpm以上を多用するわけにはいかないが、ピッチングモーションをほどよく感じさせながらのメリハリのあるライディングを心がければ、けっして危険ではない。というより、いたずらに緊張感をあおるような挙動をZZR1400は見せないのである。

硬すぎない車体、ビギニングから動きのいい前後のサスペンション、ロックする寸前までコントロールしやすい前後ブレーキといった各パートのレベルの高さと、その融合のうまさがそこにあるからだ。

高性能をひけらかすのではなく、高性能を安全に引き出せるノウハウの積み重ねがそこにあることを教えてくれる。いうなればカワサキ流のインテリジェンスだ。世界最速という数値だけでは表せきれないとても大切なポイントがここにある。

コーナーのロール開始時にも車体の硬さを少しも感じさせないし、バンク中の微妙なバランス補正も、まるで400㏄クラスのような気軽さでやれてしまう。イージーであるけれど、なめてかかるようなこともない。ライダーを勘違いさせない点でもZZR1400はすぐれている。

2008年モデル ZZR1400(ZX1400C) インプレッション

問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
柏 秀樹

自身が主催するライディングスクール、KRSを主な活動としつつ、雑誌やDVDなどのメディアで、ライディングテクニック講座や車両インプレッションを行なっている。KRSはオンロードからオフロードまで、週2〜3回のペースで開催されている。
https://kashiwars.com




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