ヨシムラ
ストリートとカフェ個性が異なる2台を駆る
「なんだか落ち着くなぁ」
W800STREETにまたがったときの第一印象だ。丸型ヘッドライトや大きく手前に引かれたアップハンドル、2眼メーター、ボリューミーなガソリンタンク、肉厚で座り心地がよいシートなどなど、奇をてらうところがないベーシックな車体構成は、見たままのイメージでライダーを受け入れてくれる。スーパースポーツのような刺激はないが、包み込むような絶大な安心感がある。
セルを押すと並列2気筒エンジンは即座に目覚めた。軽くアクセルを開けると、わずかに後を追いかけるように吹け上がってくる。ライダーを急かさないフィーリングは好ましいもの。低回転ではドコドコ感がしっかりと伝わってくるあたりも心地よい。これからこのバイクと旅に出ると考えるとワクワクしてくる。
アシスト&スリッパークラッチを採用し操作性が軽いクラッチをにぎりギヤを入れる。クラッチレバーの操作が250ccかと思うくらい軽いので、今回のツーリングを通して左手が疲れるという事態にはならなかった。それ以外にも最新バイクらしい装備がある。LEDヘッドライトやABS、ETC2.0、グリップヒーター(CAFEのみ)が標準装備されている。スタイルこそレトロだが装備は現代レベルなのだ。
編集部を出ると市街地を走りながら高速道路へ向かう。並列2気筒エンジンは低回転域からトルクフル。しかもなめらかな出力特性なので特別な気づかいは不要だ。歯切れよい排気音と適度な鼓動感が伝わってくるので、クルマの流れに乗っていても充実感が得られる。意外だったのはハンドリングが機敏だったこと。前後18インチの細いタイヤや重心の低さなどが相まって、行きたいと思った方向にノーズがスッと向いてくれる。先代のW800はフロントが19インチでもっと大らかなハンドリングだった記憶がある。現行モデルはより洗練された、現代風の操縦感覚になっている印象を受けた。
市街地走行
高速道路では予想とは違う走りが体感できた。古典的な車体構成やエンジンスペックなどから高速走行はあまり得意じゃないだろうと思っていたのだが、実際は違った。高速道路を走っているくらいの速度であれば、安定した巡航が可能なのだ。もちろん風圧はモロに受ける。ビキニカウルがあるCAFEは少しは防風性がいいが、それでもフルカウルスポーツとは比較にならない。しかし大きな不満は感じない。ダブルクレードルフレームは完全新設計でパイプ厚を調整するなどして剛性を最適化。足まわりにも数多くの改良がほどこされている。そのため高速域での操安性が向上しているのだ。と言っても限界値が劇的に高くなっているわけではない。路面にうねりがあれば車体は振られることもある。しかし、それもひと昔のバイクなら当たり前のように起きた現象。W800の車体構成はオーソドックスなので、この挙動は仕方ない範囲だといえる。
高速道路
ヘッドライト照射性
メーター視認性
車載工具
ヘルメットホルダー
荷かけフック
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横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。