ヨシムラ
カワサキバイクマガジンの編集部員がバイクを1,000km走らせて、道中のエピソードを交えながら、走りの能書きを垂れてしまおういうのがこの企画。今回選んだバイクはZ650。このモデル名を聞いて思い浮かぶのは、ザッパーこと1976年のZ650。はたしてザッパー性能は今も健在か?
受け継いだモデル名は軽快感がウリのZ650
2017年、現行ZシリーズにZ650が加わった。数年前なら「ちょっと、Zという名前を付け過ぎじゃない?」と思うところだが、今となってはそんな気すら起きない。というのも、なにせモデル名の付け方が潔い。現在ラインナップされているモデルのうち、ZシリーズはZ1000、Z900、Z800、Z650、Z300、Z250/SL、Z125/プロで、最近ではニューモデルZ900RSも登場した。ここまでくると、Zと付くのが普通になるのか、それとも感覚がマヒするのか、冒頭に述べたような感覚はなくなる。それどころかZ900RSの噂を聞いた時は、そのモデル名からしてどんなモデルなのかと、ワクワクしてしまったほど。
現行Zシリーズのうち、70年代に発売されていた空冷Zと同じモデル名もあり、現行Z650は、1976年に発売が開始されたZ650と同じモデル名だ。後者のZ650は軽快な運動性能がウリだった。その機敏な性能から“風を切り裂く”の意味を込めて“ザッパー”の愛称が付けられた。それだけに現行Z650も、ザッパーのごとく軽快な乗り味なのだろうと期待が高まる。その乗り味を、群馬県の赤城山、榛名山、妙義山をめぐるツーリングで試してきた。
なんといってもここがポイント
この企画“ザ・1,000km”は1日500km、2日間で1,000kmを走る。この長距離を走るとなると、ツアラーのような疲れないバイクだとロケがとても楽になる。
Z650はというと、スーパーネイキッドのカテゴリーに入るので、スプリンター的な一瞬のパフォーマンスを楽しむイメージが先行して、長距離を快適に走れるようなモデルではないのでは…? この企画で乗る前は、そのようなイメージを持っていた。
見た目もアグレッシブで、ライディングポジションはさぞかし特殊なのだろうと想像していたが、跨ってすぐにそんな想像は吹き飛んでしまった。エンジンが2気筒なので、シート下からニーグリップ位置にかけての車幅がとても狭く、足を真下方向に下ろすことができる。たとえれば、跳び箱にまたがるか、平均台にまたがるかの違い。Z650は平均台で、しかもシート高が低いので足着きがとてもいい。
グリップ位置も想像より高く、ゼファーやZRXといったクラシカルネイキッドのようなアップライトなライディングポジションに近い。特殊なライディングポジションどころか、乗りなれた自分のバイクでないにもかかわらず違和感がまったくないのだ。これから始まる短期ロングツーリングに向け少し気持ちが楽になり、Z650を群馬に向けて走らせた。