絶版車の医学

“絶版車の医学”では、絶版車にありがちな症例を紹介し、その対策を解説していく。アドバイザーは絶版車専門店のウエマツだ

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ヨシムラ

[第9回]メインハーネスのトラブル

バイクの血管的存在。不具合の影響は大きい

メインハーネスは外部からは確認しずらい。それでいて長い目で見れば消耗品ということになる。

メインハーネスのトラブルで起こりがちな症状としては

  • ライトやウインカーが点かない
  • 始動性が悪い、またはかからない
  • ヒューズが切れる
  • バッテリーが上がりやすい

など電気に関すること全般にわたります。

こう語るのはウエマツの岩田整備士。こういったトラブルが発生した場合、ライトやウインカーなど末端のパーツを疑いがちだが、チェックしていくと最終的にハーネスにたどり着いたということもめずらしくないと付け加えた。

「主な原因は時間が経過したことによる劣化です。旧車なら避けられないことかもしれません。また、劣化により硬化した配線がハンドルの動きに追従できず、折れてしまうこともあります。バイクのメインハーネスは狭いスペースに押し込まれているので、そんなトラブルも起きやすいのです。あとはカプラーやギボシが熱を持ち、焦げたり変形して電気が流れなくなることもあります」

上は長時間熱を持った結果、カプラーが溶けて外れなくなった例。中央は焦げたギボシ。下が折れたハーネス。これでは正常な電気の流れは期待できない

コネクターの根本が断線しかかっていたり、サビで通電が悪くなっていたり。配線が集中している部分では断線の原因を探すこと自体が困難な場合もある

純正ウインカーは配線が1本の場合もある。これはマイナス側は車体アースを使っているからだ。ウインカー不調の原因がアース不良ということも考えられる
のだ

電装系の要だけに早めに対処したい

解決法でベストなのは新品交換とのこと。メインハーネスは何本もの配線が束になっているので、そのなかから断線した1本を探すのは非常に難しい。もしうまく見つかって直せたとしても、別のところがトラブルを起こす可能性も高い。

「だから旧車の場合、交換したほうが安心度がはるかに高くなるんです。メインハーネスを新品にしたら『始動性が向上した』『ライトが明るくなった』という話もよく聞きます」

不安のないバイクライフを送るためにも、メインハーネスは早めの交換をおすすめしたい部分だ。

最近の社外ハーネスは、最初からETCやスマホ、ナビの充電に使えるアクセサリー電源を別配線にしてある便利なタイプもある。現代向けの実用的なモディファイがうれしい

社外の新品ハーネスも、基本的に純正に準じたコネクター形状なので無加工で交換が可能だ。交換すればこの先10年近くはトラブルの心配から解放される

メインハーネスが欠品車種も心配なし

Zは年式や仕向地によって配線の数やコネクターの形状が異なる場合がある。また不人気車の場合はメインハーネスが市販されていないことも。「そんな場合でもノーマルのハーネスを預けていただければ同じものを作れます」とウエマツの岩田氏は語る。そのときアクセサリー用の配線を追加することもできる。ウエマツでは過去に作ったハーネスを在庫している場合もあるそうだ。

横田 和彦

1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。




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