ヨシムラ
仕組みを理解すれば原因の特定ができる
絶版車にありがちなトラブルのひとつに電気系統の不具合がある。それが原因による症状はさまざまだが、今回は“定期的に乗っているのにバッテリーが上がってしまう"といった充電系のトラブルについての症状例と対策を、ウエマツ修理部の岩田さんにうかがった。
まずトラブルの初期症状は、次の状態が挙げられる。
- セルの回りが悪くなる
- ウインカーが点滅しない
- ホーンの音が弱い
「この時点で考えられるのは劣化や液不足などによるバッテリー本体の不具合ですね。トラブルを疑うときは末端からというのが鉄則です」
しかし、バッテリーに問題がないのに再び同じ症状になる場合は充電系のトラブルが考えられる。バイクは、エンジンの始動によりバッテリーが充電されるので、定期的にエンジンをかけていればバッテリーが急激に弱まることはないのだ。
「充電系のトラブルには大きく分けて2種類あります。充電不良と過充電です。充電不良はエンジンにある発電機が電気を発生しない状態。ジェネレーターコイル(ダイナモ)の劣化や、カプラーやギボシの劣化による断線、接触不良、マイナスアース不良などが考えられます。こうなるとバッテリーからは電気が出ていく一方で、すぐにバッテリー上がりを起こしてしまいます。過充電はエンジンが発生した電力をバッテリーに送る時、電圧を安定させるレギュレーターが機能せずに大容量の電気がバッテリーに流れてしまうことが考えられます。こうなると、バッテリー液が一気に蒸発してバッテリーが機能しなくなる。どちらも絶版車にはありがちなトラブルですね」
絶版車の電気トラブルは元から治すことが大事
対策は導通テスターなどを使って原因箇所を特定し部品を交換する。ジェネレーターコイルやカプラー、ギボシ類は新品に交換。レギュレーターはレクチファイアと別体の場合、より新しい一体型のレギュレートレクチファイアに交換することで信頼性も向上させることができる。
「Zは年式によって配線が異なることもあります。トラブルの原因が突き止められない場合は、ノウハウが多いプロに依頼する方が早く解決することもあります」
電気系は劣化してしまうことを忘れずに、定期的な点検を心がけよう。
電気系統全体を考えながらチェック・交換する
電気系統のトラブルは広い目で見る必要があります。どこかでトラブルがあった場合、他にも不具合間近な部分がある可能性があるからです。ピンポイントで判断せず、全体をチェックしましょう。普段からバッテリーを確認していると早めにトラブルを発見できます。また、LEDなどでの省電力化も効果があります。(ウエマツ整備士 岩田さん)
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。