ヨシムラ
80年代中盤、バイクのエンジンが空冷から水冷に移行する時期、さまざまな新しい試みが導入されていた。その一つがカワサキ初のミドルクラス水冷マシンに採用されたアルミクロスフレームだ
80年代中盤、グランプリから撤退したカワサキは、国内他メーカーがレーサーレプリカを意識した車両を発表していく中、GPZ900Rを筆頭に独自のスーパースポーツ路線を歩んでいた。ミドルクラスにおいて、その流れの中で発表された初の水冷4気筒モデルGPZ400Rも、類に漏れず大柄な車格に2本出しのマフラーと他メーカーのモデルとは一線を画した風体だった。時代の流れに逆行するような感もあったが、結果としては、Z400FXに続く爆発的なヒット商品となったのだ。そのGPZ400Rで初めて採用されたのが今回紹介するエンジンを囲うような独特の形状をとるアルミクロスフレームである。
59psという当時の400ccクラス最大のエンジンパワーに対応するべく耐久性と高剛性を追求。とくにコーナリングや切り返し時に発生するねじれに対してすぐれた強度と復元性を発揮し、いかなる走行条件のもとでもマシンを安定させることを念頭に置いて開発された。形状は上の写真を見てもらえばわかるとおり、メインパイプは、ヘッドパイプからインライン4エンジンの全幅にまで拡がり、テールからフロント斜め下に伸びるシートレールはフォージングプレート上端でメインパイプとクロスしながらエンジンセンター部をホールドすることで十分な強度の確保を目指している。
1985 GPZ400R
最終の(とはいっても93年以降変化はないが)アルミクロスフレームは、エンジンを支えるツインチューブには合わせ材を、ステアリングヘッドやスイングアームピボットには鋳造部品、さらにシートレールからエンジンボトムへとつながるクロスフレーム部には押し出し材を採用している。このように部位によって製法の異なるアルミ材を使用することで、軽量化を図りながら剛性と柔軟性を兼ね備えた理想的なフレームを追求しているのだ。ほぼ同じ太さのアルミ角パイプのみで構成されていたGPZ400Rに比べ、ツインチューブの太さに至っては2倍近い太さへと変わっている。まさに時代とともに進化し、生き残っていった数少ないシステムの一つだと言える。ちなみにZZR400のころは「アルクロスフレーム」と呼ばれていた。
1985 GPZ600R
1990 ZZR400
1990 ZZR600
2006 ZZR400
KAZU 中西
1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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