ヨシムラ
内容的には地味だが、カワサキ車に乗る以上、いつかは役立つネタでお送りしてきた本コーナーも今回で終わる。すべては私が何台も購入して知り得た対処法であり、実践してきたからこその確信であるといえる
何台も乗り継いで知ったニンジャのもたせ方
1台のバイクと長く付き合う。そのなかで知りえる長寿ポイントは少なくない。だが、それは同車種の他車両にも共通するか否かは、オーナーズミーティングやインターネットのコミュニティなどで確認しあうのが一般的だろう。同一車種を数多く取り扱ってきたショップに尋ねてみるのもまたよし。私の場合は、気に入れば同一車種を何台も乗り継いでしまうクセのようなものがあり、比較観察できるからこそ知り得たことがいくつかあった。その一つがGPZ900Rで、現在まで8台のGPZ900R/750R(以下、ニンジャ)を乗り継いできた。
これまでニンジャの寿命を延ばすポイントについてはいくつか紹介してきた。そのほとんどが動的な部分であったと記憶している。今回は静的な部分についての“転ばぬ先の杖”といえる長寿ポイントである。静的というよりはむしろ固定的と表現した方がいいかもしれない。
まず一つめはアッパーカウルブラケットの固定ボルト部。問題の部分はステアリングネックへの固定ボルト部で、走行中に車体前部からガタンガタンと大きな音がするのに見ためには何ら問題がない場合、その固定ボルトが通る穴が摩耗して長穴になっていることがあった。これに気付いたのは2台めのニンジャへ乗り継いだときで、ナットを増し締めしても問題は解決しない。そこで、ボルト穴を拡大加工し、1サイズ太いボルトを使うことで対処した。
3台めのニンジャが納車されたとき、真っ先にボルトの締め付け具合を確認した。しっかりと固定されていたことから考えると、カウル+ブラケットの自重がこの部分に大きな応力を与え、締め付けによる面圧を超えてブラケットが上下動してしまうのだと推測した。ブラケットの上下動により摩耗した分、ボルト&ナットの締め付け力が低下し、結果的に緩んだのと同じ状況になってしまったのだろう。ならば!と以降のニンジャでは、ノーマルのナットを外し、まわり止め機構付きのナットに変更。締め付けトルクについては標準値より少し強めにセットした。結果、カウル&ブラケットの上下動はなくなり、次の乗り替えに至るまで長穴になることはなかったのである。
もう一つは、スピードメーターケーブルのガイド金具。鋼線を曲げて製作したかのようなもので、見ためではキレイな楕円状につながっているが、端部はいわゆる切りっぱなし状態となっており、走行距離に応じてそのエッジがケーブルの外皮を削り取っていくことを知った。ならば!と私が取った対策法は、端部を外側へ曲げ広げ、エッジとケーブルが接触する事を回避。実に簡単な方法だが、その後の乗り継ぎで観察した結果、意外に有効な手段なのでは?と思える。
以上2点は、1回の走行距離が長めで、なおかつ車体が激しく動くような走りを繰り返していると起こる現象。なので、走り方によっては必要のない対処法かもしれない。また以降のカワサキ車では起こっていないので、ニンジャ特有の事例であるといえる。すでに絶版となっている今、ニンジャは中古でしか購入できないわけだが、これから乗ろうと思っている人、すでに乗られている人ともに、この部分はチェックしておくに越したことはない。なぜなら、ニンジャのカウルは、ニンジャらしさの象徴であるからだ。
終わりに…
いかなるカワサキ車においても、末永く付き合っていくために必要なワンプレーは、エンジンオイルに尽きるといえる。実はこの話、私がキングオブカワサキ車だと思っているFX400Rユーザーだった時代に、カワサキショップ山梨で教えてもらったノウハウである。ブランド選びから始まり、粘度や交換サイクルなど、その車両ごとに最適が異なるとも教えてくれた。歴史の長い職人気質の店には、真の意味で直す、もしくは長持ちさせるノウハウが膨大に蓄積されている。そう考えると、車種問わず寿命を決める究極のワンプレーとは、信頼のできるお店と出会うことかもしれない。
KAZU 中西
1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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