寿命を決めるワンプレー

「バイクを保たせる」ための術をいちバイク乗りの視点から紹介

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ヨシムラ

バイクのサスペンションセッティングとは、ダンパーユニットのみの調整を指すのではない。タイヤのクッション性能まで考慮してのセッティングだ。固めた余波はタイヤのトレッド面を激しく磨耗させ、不経済さは極まりない。持たせるためにはソフトに振るのだ。

動かないサスペンションはタイヤを極端に磨耗させる

数々のレースシーンにおいて、アイデアと性能のすごさを見せつけたユニ・トラックサスペンション。初期はソフトに、奥では踏ん張り、まるで路面に吸い付いているかのような2次旋回をもたらしてくれる。レースシーンから市販車へとフィードバックされるテクノロジーのなかでも、1、2を争う有益さだ。

第4回 タイヤの寿命を左右するリヤショック

マスの集中化をねらいレイアウトされたリヤショック。大筒デザインから放熱性も高そうに思えるが、乗り方や車種によっては放熱が追いつかず、ヘタリを感じてしまうことも

たとえばGPZ900RやZZR1100の場合、組み合わされるリヤショックは、スプリングとエア併用のクッションに加え、操作が容易な伸び減衰調整機構が設けられている。それ自体は非分解式となっており、基本的にはオーバーホール不可能である。ヘタリを感じた場合は新品に交換するか、社外の高性能ショックに代替するしかない。そんなとき、よく耳にするのが「ノーマルはイマイチだから社外のハードタイプにした」との声。乗り方によっては正解かもしれない。だがリヤショックの機能はタイヤの寿命と密接な関係にあることを忘れてはならない。

私の経験では、キャンプツーリング用の荷物を積載し、ガス欠になるまで高速連続走行すると、新車に近い状態でもダンピング特性にヘタリを感じる。おそらくリヤショックで発生したフリクションに対し、放熱が追いつかないからだろう。だからといって、ダンピングアジャストや加圧を強めても効果はない。むしろフリクションが増えて、その負担がタイヤの磨耗を早める。よってそうなったときの対応策は、休憩時間を取ること。冷えれば機能は復活する。

第4回 タイヤの寿命を左右するリヤショック

写真はZZR1100のリヤショック。ヘタリ感を嫌ってハードなセッティングに振ると、リヤショックで吸収・開放されなければならないはずのエネルギーがタイヤへの負担となってしまう

また社外のリヤショックに交換する際も、スプリングレートを硬くしすぎないように注意したい。ガチガチに固めた状態は、路面からのフィードバックはわかりやすいが、タイヤを必要以上に磨耗させる。実例として、適正レートならば1万2000km持つタイヤでも、固めすぎれば3000kmしか持たない。またリヤショックを固めすぎた影響はフレームを介してフロントフォークに増幅伝達される。直進安定性が悪くなったからとフロントフォークに手を加える人がよくいるけれど、リヤショックのスプリングレートを適正にすることで問題は解決するケースも…。

長持ちさせたければリヤショックは動かすべし

つまり、よくソフト傾向にあるといわれるノーマルのリヤショックは、直進安定性やタイヤの磨耗まで考えられた高バランス設定なのである。ソフトであるがゆえの大きなピッチングモーションを不快に感じる人もいるだろう。だが、それは車体やキャラクターに対して適正なセッティングとなっているのだ。そしてタイヤの寿命を重視するならば、よく動くサスペンションセッティングに設定するほうが得策である。

フレームへの影響は?

リヤショックのセッティングを極度に固めると、路面からの入力がフレームへシビアに伝わるばかりか、車体を前方へ運ぶためのトランスファーやトラクション性能が落ち、直進安定性をひどく悪化させる。サスペンションはよく動かすのが基本だ

第4回 タイヤの寿命を左右するリヤショック

フレーム剛性はサスペンション機能やタイヤの磨耗具合へも大きく影響する。メーカーは膨大な時間をかけて、そのベストバランスを具現化しているのだ。むやみに固めるのはよくない

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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https://twitter.com/kazu55z




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