ヨシムラ
孤高のツインスポーツ
カワサキには並列ツインエンジンにおける長い伝統がある。古くはWの時代までさかのぼり、4気筒エンジンが登場した後も、ZやGPZという名車の称号を冠しつつツインエンジンを搭載したモデルを登場させている。その多くは高い完成度を誇り一部に熱狂的ファンを持つものの、やはり4気筒に比べるとマニアックなバイクという認識が一般的。本当の評価をされないまま消えていった名車が数多いのである。
まさにその代表として挙げられるのが、EX-4だ。4気筒全盛の時代にあえて2気筒で挑んだカワサキのこだわりがあふれるマシンで、このバイクを操ったライダーをとりこにする魅力を持っていた。
カテゴライズするならばスポーツツアラーという位置付けになるかもしれないが、グラマラスなZZ-Rと違いエッジの効いたスリムなデザインが特徴。防風性能の高いアッパーカウルを装備し、燃料タンク容量もZZ-R400と同量の18Lを確保。燃費のよさと相まってツーリングの相棒としては申し分のない特性で、さらに峠ではレーサーレプリカを追いかけ回せるほど幅広い走行性能も発揮した。
このポテンシャルを支えていたのが、GPZ900Rのエンジンを半分にしたと言われる熟成のパラレルツインである。最高出力は自主規制値に迫る50psを発揮し、レッドゾーンは1万rpm以上というスペック。まさに4気筒レベルの性能を誇るツインであった。そんな高性能エンジンを搭載しながらも価格はリーズナブルで、当時ZZ-R400が新車で67万円を越えていたのに対し、50万円を切る価格設定だったことも立派としか言いようがない。500ccエンジンを搭載した輸出仕様はヨーロッパで高く評価されたものの、日本での認知度が上がらないまま消えてしまったのが悔やまれる名車である。
EX-4 SPEC
●全長×全幅×全高:2,085×710×1,165(mm) ●軸間距離:1,435mm ●乾燥重量:177kg ●エンジン形式:水冷4ストロークDOHC並列2気筒 ●排気量:398cc ●ボア×ストローク:70.0×51.8(mm) ●圧縮比:10.7 ●最高出力:50ps/10,500rpm ●最大トルク:3.6kg-m/9,000rpm ●燃料タンク容量:18.0L ●発売当時価格:49万9,000円