ヨシムラ
外観
並列する4つのシリンダーの中央にカムチェーントンネルをレイアウトするシンメトリーデザイン。シリンダーやシリンダーヘッドを冷却するための放熱フィンは、必要性からデザインされた機能美メカニズムで、無駄なく突き詰められた設計だと感心する。エンジンマウントは、前1下1後ろは上下1ヶ所の4点支持で、シリンダーより上部だけを取り外すことも可能。分解整備がしやすい構造となっている。
強靭なクランク
軸受け部にローラーベアリングを採用する組み立て式クランクシャフト。すでに一体成型のクランクシャフトもあった時代だが、あえてこの形式を選んだことに先見の明があると栗原氏はいう。「数多くの空冷Z系が現存、実稼働できているのは、整備環境が悪い場所での運用やオイル管理の悪さを想定した、壊れないクランクシャフトがあったからこそだと思います。分解整備するたびに感心します」
整備性のいい2バルブ
空冷Z系のバルブまわりは、直押し式のDOHC2バルブを採用している。長時間の高出力運転を想定して開発されたものだが、整備性の面でもすぐれているという。「燃焼室に対するバルブの大きさやステムの径、材質など、当時としては熟慮されたものだと思います。当たり前のことですが、本数が少ないので4バルブ形式より整備する時間が短くて済みます」
今に通じるポート形状
高性能エンジンに必要な3つの要素は、いい混合気・いい圧縮・いい燃焼といわれているけれど、いい圧縮を実現するためには、シリンダーの充てん効率を高めなければならない。空冷Z系の吸排気ポートは、すぐれたデザインによって高い充てん効率を得ているという。「燃焼室側からポートを覗けば、充てん効率の高さを伺い知ることができます。現代的なエンジンと大差なく、設計開発がいかに優れていたかがわかります」
オイルたまりのメリット
空冷Z系エンジンの長寿には、シリンダーヘッドの上部デザインも大いに貢献しているという。「シリンダーヘッドに圧送されるオイルは、カムチェーントンネルへと落ちていきます。空冷Z系のエンジンは、エンジンを止めてサイドスタンドで駐車しても、カムシャフトまわりのオイルが一定量溜まるようなデザインになっています。再始動の時に潤滑不良を起こしにくく、ダメージを受けにくい」
メタル支持の強み
カムシャフトの支持部にレイアウトされたメタル=プレーンベアリング。シリンダーヘッドへのダメージを軽減する役割もあるという。「カムシャフトは、摩耗によって振れを起こすことがあります。メタル支持でない場合は、ダメージを受けたカムシャフトとシリンダーヘッドを交換することになりますが、メタル支持だとシリンダーヘッド本体は護られ再使用できます」
セパレート機構を生み出すOリング
シリンダーとシリンダーヘッドのガスケットは、Oリングを用いた3ピース構造。Oリングは、シリンダーのカムチェーントンネルを囲うようにレイアウトされている。「Oリングを使う形式は、併用するガスケットの厚みまでOリングを潰せる。隙間なく圧着できるという特徴があります。歪みに強いガスケット形式とも言えますね」
KAZU 中西
1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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