ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
複雑な電子制御の設定を最小限のスイッチで操作
ひと昔前のモデルでは、スイッチボックスのスイッチの種類といえば、左側はウインカー、ヘッドライトのオン/オフとハイ/ロー、ホーン、右側はスターターボタン、キルスイッチといった感じで、ハザードスイッチが付いていれば、スイッチの種類が増えたような感じだった。ところが、現在では電子制御システムを採用したモデルも多く、スイッチの種類はハザードスイッチが付いているレベルの話ではない。電子制御システムを操作するためのスイッチが、スイッチボックスにズラリと並び、見た目も複雑なスイッチボックスが増えてきた。カワサキではニンジャH2 SX SEシリーズやZ H2シリーズ、ヴェルシス1000SEなどが、電子制御システムが充実しているぶんだけスイッチの数も多い。
今回選んだZ H2 SEにも、多くのスイッチが並ぶ。スイッチで操作できる機能は非常に多く、一般的なメーター表示切替以外に、ライディングモードの選択、パワーモードやトラクションコントロール、クイックシフターやクルーズコントロールなどの電子制御システムの設定に加え、Z H2 SEには電子制御サスペンションが採用されているので、スイッチでサスペンションセッティングもできる。走行性能に関わる多くの設定を手元のスイッチで操作できるのだ。
近年普及する多機能スイッチの操作
確かに、ひと昔前のモデルに比べればスイッチの数は多い。しかし、Z H2 SEを含めて、カワサキ車の場合、操作できる設定メニューの多さに対してスイッチの数が少ないという見方もできる。スイッチの長押しとポン押しを組み合わせることで、限られたスイッチの数で、走行性能に関わる多くの設定を変更できるようになっているのだ。各種設定変更は取扱説明書に詳しく解説されているのだが、ある程度のバイク歴がある人ならば、その解説を読まなくても、あれやこれやと適当にスイッチを操作していれば、目的の設定変更に到達するのではないだろうか。一見、複雑に思えるスイッチボックスだが、設定変更はしやすい。
ただ、ブラインドタッチとなると話は別だ。スイッチのレイアウト自体は、押しやすい配置になっているのだが、ウインカーやホーン、ヘッドライトのハイ/ローの操作を除く、電子制御システムを操作するためのブラインドタッチができるようになるには、相当な慣れを要するだろう。ちなみに僕は、この手のスイッチボックスを採用したカワサキ車に毎号乗っているが、基本操作以外は、いまだにブラインドタッチできないでいる。
総じて、今回紹介したようなカワサキ車のスイッチボックスは、ブラインドタッチができるかどうかは別として、非常に多くの複雑な設定を、スマートフォンのごとく、いかに簡単に操作できるかが追求されているのではないだろうか。
今回のチェックマシン「Z H2 SE」
Z H2 SEの主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,085×815×1,130(㎜) |
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軸間距離 | 1,455㎜ |
シート高 | 830㎜ |
車両重量 | 241㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒・998㎤ |
ボア×ストローク | 76.0×55.0(㎜) |
最高出力 | 147kW(200㎰)/11,000rpm |
最大トルク | 137N・m(14.0kgf・m)/8,500rpm |
燃料タンク容量 | 19ℓ |
タイヤサイズ | F=120/70-17・R=190/55-17 |
価格 | 217万8,000円 |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏