ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
カワサキ車トップ3の我々を満足させるシート
車体をしっかりコントロールできて、高速道路を長時間走ってもお尻が痛くならない。普段、我々がバイクに乗るうえで、シートに求める大きなポイントは、この2つの要件ではないだろうか。その観点から言うと、カワサキ車の中でもっとも上質なシートを採用しているモデルはヴェルシス1000SEだ。ヴェルシス1000SEのシートは、分厚いのだがフカフカした感覚はなく、高反発ウレタンのようにしっかりとお尻を受け止めて、前述した2つの要件を高い次元で満たしている。
ヴェルシス1000SEの次に並ぶのが、ニンジャ1000とニンジャ650のシートだ。ヴェルシス1000SEのシートに関しては、過去に性能チェックしているので、今回はニンジャ650のシートを試した。走行距離は2日で約700㎞。1日目は高速道路を約150㎞、一般道路を約270㎞走り、2日目は一般道路を約60㎞、高速道路を約220㎞走った。
長距離走行の快適性とスポーツ性を両立
ニンジャ650のシートに関しても、ポイントはコントロール性と快適性といえる。ニンジャ650はツーリングを快適にこなせるスポーツモデルという位置付けだが、ツアラーとして考えるとシートはやや薄め。といってもスーパースポーツほど薄くはない。その中間といったところか。座った感触は、シートからの反発力にしっかりとコシがあり、高反発ウレタンよりやや硬い印象だ。
しっかり踏んばるシートのため、ライディングポジションをクイックに移動して積極的に車体をコントロールする時にも、シートの存在が邪魔にならなく、加えて、路面の細かな凹凸などタイヤからのインフォメーションも感じやすい。それでいて、約400㎞を走った翌日、高速道路を約200㎞一気乗りしても、お尻が痛くなることはなかった。
ただ、ヴェルシス1000SEのシートは、2日で1000㎞走ってもかなり快適な状態を維持していたのに対して、ニンジャ650の場合、2日目の走行を終えるころには、痛くはないが、お尻の後方あたりにちょっとした圧迫感のような疲れを感じた。おそらくその疲れはシートそのものの影響というよりも、シートとステップの位置が関係しているのだろう。といっても、ニンジャ650のシートで感じた疲れは、カワサキ車の中でもっとも快適なシートだとカワサキがうたうヴェルシス1000SEのシートと比較しての話であり、休憩したいほどのストレスを感じるほどではない。ニンジャ650のシートは一般レベルで考えると十分上質な部類に入る。
ニンジャ650のフォルムはツアラーテイストを備えながら、スーパースポーツに似たアグレッシブなデザインが採用されている。シートもまた、快適性を確保している一方で、他のツアラーよりもスポーツテイストの強い作りとなっている。
シートの着脱と固定
一般的に、車体にシートを固定する方法は、タンデムシートかライダー側シートがキーでロックされ、キーでロックされていない側のシートは、ボルトか、もう片方のシート下から操作できるフックで固定されていることが多い。いずれにしても、シートと車体が固定されているのが一般的だ。ところがニンジャ650の場合、ライダー側シートはタンデムシートで抑えることで車体に固定されている。
今回のチェックマシン「Ninja 650」
Ninja 650の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,055×740×1,145(㎜) |
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軸間距離 | 1,410㎜ |
シート高 | 790㎜ |
車両重量 | 194㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列2気筒・649㎤ |
ボア×ストローク | 83.0×60.0(㎜) |
最高出力 | 50kw(68㎰)/8,000rpm |
最大トルク | 63N・m(6.4kgf・m)/6,700rpm |
燃料タンク容量 | 15ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70–17 (R)160/60–17 |
価格 | 90万2,000円 |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏