ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
キャラクターに合致した適材のスクリーン
スクリーンはバイクの快適性に大きく影響するパーツだ。体に当たる走行風を低減させる他、真冬のライディングでは寒さをやわらげる効果もある。ツーリングでの有効性に関して言えば、現在ラインナップされているカワサキ車のうち、ヴェルシス1000SEやニンジャ1000のスクリーンが代表格といえる。この2車種に採用されるスクリーンは、工具を使うことなく手軽に高さを調整できて、表面積が広いので防風効果がかなり高い。ツーリングに最適な逸品なのだ。だが、ここまでの豪華装備でないにしろ、快適性に大いに貢献するスクリーンがある。その一例がヴェルシスX250ツアラー(以下、ヴェルシス250)のスクリーンだ。
ヴェルシス250のスクリーンは前述した2車種のスクリーンよりコンパクトで、高さ調整もできない。でも、ツーリングでは絶大な効果を発揮するのだ。ポイントは防風性が高く、スクリーンが視界を邪魔しないこと。前述2車種のスクリーンよりコンパクトだけれど、垂直に近い角度で取り付けられているので、走行風がライダーを避けていくのだろう。身長170㎝の僕の場合、走行風が当たる箇所はヘルメットのシールドより上、そして肩から二の腕にかけてだ。110㎞/hくらいまでは軽く風圧がかかるくらいだけれど、それを超えるとバタバタと風圧を強く受ける。ただ、不規則な乱気流が当たるわけではなく、風が流れるように後方に抜けていく感覚だ。
風と寒さから身を守り快適な長距離移動を確約
ここで、スクリーンを立てる角度が大きいと、空気抵抗が大きくなりスピードに影響するのでは?という懸念が生じる。確かに高速域では、風圧と車重に馬力が負けるのだろうか、スピードの伸びが悪くなるが、ヴェルシス250の車両特性を考えてほしい。エンジンと車体の特性からして、110㎞/hくらいまでがメインのスピード域だろう。スクリーンが垂直近くまで立っていようとも、そのスピード域までは問題なくスムーズに加速していく。
つまり、適正スピード域ではスクリーン形状が加速やスピードに影響することはほとんどなく、しかも、ライダーが受ける風圧が小さく、防風効果がかなり高い。加えて、スクリーンがコンパクトなので、ライディング時に目線の邪魔にならずに前方をクリアに確認できる。ヴェルシス250のスクリーンは、車両キャラクターに適した逸品といえるのだ。
今回のチェックマシン「VERSYS-X250 TOURER」
VERSYS-X250 TOURERの主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,170×940×1,390(㎜) |
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軸間距離 | 1,450㎜ |
シート高 | 815㎜ |
車両重量 | 183㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列2気筒・248㎤ |
ボア×ストローク | 62.0×41.2(㎜) |
最高出力 | 24kw(33㎰)/11,500 rpm |
最大トルク | 21N・m(2.1 kgf・m)/ 10,000 rpm |
燃料タンク容量 | 17ℓ |
タイヤサイズ | (F)100/90–19 (R)130/80–17 |
価格 | 70万4,000円 |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏