ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
市街地で楽しめるハイパワーエンジン
ZX‐14Rはカワサキ二輪事業の熟成の極みだ。コーナリング性能、各機能の操作、重量バランスといった性能面からデザインまで、あらゆる要素にこれまでの経験が活かされ、高い完成度をほこっている。スロットル操作に対するエンジンの反応も例外ではない。
とにかくエンジンの反応がやわらかい。このエンジンフィーリングは走り出してすぐに気付く。わずかなスロットル操作に対するエンジンの反応が非常にマイルド。いや、マイルドとは少し違って、扱いやすいのだが、そのひと言ではすまされない。やんわりエンジンが反応するのだが非力感はなく、芯があるかのごとくスロットル操作にシッカリと反応するのだ。たとえるなら、ものすごいパワー感のあるニンジャ250といったところか。
このフィーリングが感じられるのは3000rpm以下。走行シチュエーションでいえば市街地だ。そのため、普段なら苦痛でしかない信号でのストップ&ゴーも苦にならず、むしろ楽しいくらい。ZX‐14Rは200㎰モデルである。それでいて、このエンジンフィーリングは驚愕のでき栄えだ。
しかもフルモードでの話だ。ZX‐14Rにはパワーモードが装備されていて、フルモードとローモードを任意で選択できる。この手のモード切替が装備されている場合、車両によっては、フルモードはドッカンパワーで、ローモードではスロットル操作に対してエンジンがやんわり反応するタイプもある。ZX‐14Rもローモードはフルモードの75%に出力が抑えられている。だからといってフルモードが、スロットル操作に対してエンジンが敏感に反応しすぎるドッカンパワーかといったら、そんなことはないのだ。
200psマシンに隠されたシルキーな操作
では、フルモードとローモードで、スロットルレスポンスにはどのような違いが出るのか。スロットル全閉からスロットルを開けた時のフィーリングは両モードとも変わらない。ただし、スロットルを開けている状態から、さらに開けた時はフルモードのほうが加速力は強い。フルモードとローモードのスロットルレスポンスの違いが現れるのは、3000rpmくらいからではないだろうか。
低回転域では、やわらかいエンジンフィーリングだが、中回転以上では話は別。とくに6000rpm以上では爆発的な加速力を発揮する。ただしこの時も、ピーキーにドッカーン!と加速するのではなく、強烈に弾力がある極太ゴムで前方から一気に引っぱられるような感覚で、“ジワ”→“グイーン”といった感覚で加速していく。低回転と中高回転で2面性を持つZX‐14Rのエンジンフィーリングだが、エンジンが唐突に反応しないのは、どの回転域でも共通だった。
このスロットルレスポンスは、プロ級のライダーだけが感じられる性能ではなく、定期的にバイクに乗っているライダーであれば、多くの人が体感できるに違いない。
ワインディング
市街地
高速道路
今回のチェックマシン「ZX-14R」
ZX-14Rの主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,170×780×1,170(㎜) |
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軸間距離 | 1,480㎜ |
シート高 | 800㎜ |
車両重量 | 269㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列4気筒・1,441㎤ |
ボア×ストローク | 84.0×65.0(㎜) |
最高出力 | 147.2kW(200㎰)/10,000rpm |
最大トルク | 158.2N・m(16.1kgf・m)/7,500rpm |
燃料タンク容量 | 22ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17 (R)190/50-17 |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏