ヨシムラ
GPZ750R乗りが経営するカフェが大阪にある。その存在は少しずつだが広く知れ渡り、来店するライダーの数も徐々に増えている。カフェのオーナーであり、GPZ750Rのオーナーでもある生田 学さんを訪ねることにした。
カウンター越しに見るGPZのカッコよさ
扉を開けると、カウンターとテーブル席の奥に赤とグレーのGPZ750Rが鎮座する。カウンターの奥では長身の男性が、表情を変えず、黙々とコーヒーを淹れていた。このカフェを訪れたのは午後1時を過ぎていたが、人気店なのか、ランチの混雑はまだ続いていた。
ルーツと名付けられたこのカフェは、2018年10月にオープンした。オーナーは、カウンターの奥でコーヒーを淹れる長身の男性、生田 学さんだ。そして店の中にたたずむGPZ750Rは、生田さんの愛車である。
お客の注文に応じながら、時おり生田さんはカウンターの向こうに見えるGPZ750Rに視線を送る。「昔からずっと店の中に自分の乗り物を置きたいと思っていたんです。ここから見るGPZ750Rの姿は本当にカッコいい。昔、このバイクに始めて乗った時は、なんて遅いバイクなんだろうと思いました。正直、今でもそのイメージはありますが、GPZ750Rには、それ以上に引き付けるものがあるんです。だからこのバイクは、自分がこれまでに乗ったバイクの中でも、一番長く乗っているバイクなんです」
自分自身がバイク乗りということで、生田さんはいつかバイクがすぐそばにあり、そしてバイク仲間が気軽に集まることができる場所を作りたいと思い続けていた。まさにルーツは、生田さんが長年思い描き続けてきた理想の場所なのである。
これまでに生田さんはカーショップやバイクショップなど、多種多様な仕事を経験してきた。だが、そんな生田さんがもっとも心血を注いだのがケーキ作りだった。だからルーツでも、シフォンケーキを中心にさまざまなケーキを提供している。
バイク乗りはあまりケーキを食べないのでは?と質問したところ、「意外とそうでもないんですよ」と生田さんは語る。
「ケーキ店の仕事はとにかく大変で、クリスマスはもちろん、正月だってないようなものでした。バイクは好きでずっと乗っているんですけど、ケーキ店に勤務していたころは時間がなく、ほとんどバイクに乗ることができませんでした」
ルーツをオープンした後は、以前より時間的な余裕が生まれたものの、それでもバイクにかける時間を作ることは大変だ。走りに行く際は早朝の2時間だけ。午前9時までには必ず店に戻るようにしている。
「一日たっぷり走るということはありません。走りに出かける回数も、多くて月に4回程度です。遠くから来られるお客さまもいるので日曜も店を開けていますしね。とはいえ今は店の中にバイクがあるし、バイク仲間たちも寄ってくれるようになったので、バイクと離れているという感覚はありません」
ルーツをオープンして1年半。店の評判が徐々に浸透し、店を訪ねるバイク乗りが増えてきた。そんな中の一人に、元カワサキワークスライダーの多田喜代一氏もいる。ある常連客が、自身の知人の多田氏を誘って来店したそうで、それ以来、多田氏も時おり顔を見せてくれるようになった。
「店を始めて新しい人間関係ができました。中には久しぶりに会う人もいましたよ。自分の中にあるバイク度みたいなものが上がったような感じで、まるで毎日が10代のころに初めてバイクに乗った時のような、ワクワクする感じなんですよね。この店は気兼ねのない場所なので、ひとりでふらっと立ち寄って仲間を増やしていただければと思います」
GPZ750R乗りが作るメニュー
カフェの名物が、生田氏自らが作る多彩なケーキだ。なかでもシフォンケーキの評判は高く、ライダーだけでなく、地元の人たちにも愛されている。軽食類も充実しており、個性的なメニューが豊富に提供されている。
生田 学さん
これまでにカーショップやバイクショップ、ケーキ店などさまざまな仕事を経験。愛車のGPZ750Rは8年ほど前に購入している。「カワサキ乗りのお客さまは多いですよ。お互いが引き付け合うんでしょうね」
夏目健司
東海地区で雑誌の取材業務に携わる。社会ネタから街ネタ、スポーツ取材と、どんな現場にも駆けつけます。
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