レーシングマシン紹介

カワサキ歴代のレーシングマシンを紹介。レーサー独自の機能美溢れる佇まいから垣間見える、技術者たちの魂の結晶を特とご覧あれ!

モリワキZ 〜ワイン・ガードナー車〜

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ヨシムラ

80年代以前のスーパースポーツはフルカウルを装備しておらず、現代でいうネイキッドスタイルがほとんどだった。それはレースシーンにも見られ、モリワキのZはバイクフリークの度肝を抜く速さだったという。参戦するレースやレギュレーションによって、モリワキのZはさまざまな仕様違いがある。エンジンは総じてZ1000をベースとしている。

やった分だけの成果が得られて楽しかった時代

世界でも、トップクラスのコンストラクターといえるモリワキエンジニアリング。その名声を一気に高めたのは、モリワキ理論によってチューニングされたZであり、世界中のサーキットにて数々の伝説を残してきた。モリワキエンジニアリングの代表である森脇護氏によれば、Zは現代のバイクとは異なり、手を入れた分だけ見返りがあるとともに、高いレベルのチューニングをほどこしても壊れない頑丈さがあったバイクだという。

今でこそ、そのスタイリングからネイキッドにカテゴライズされるZだが、当時は第一線級の戦闘力を秘めたスーパースポーツだったのである。森脇氏によってポテンシャルを引き出され、さらなる戦闘力アップが図られたモリワキZは、メーカーのワークスマシンと互角にわたり合い、その速さと強さがまさにモンスター級だった。

「パワーがいくら出ていても、フレームを含めた車体がよくなければ、速く走らせることはできない。パワーを活かし、ライダーが安心してレースに挑めるフレームが必要」という森脇氏。速く走らせるためには物理的根拠があり、それを実践したのがモリワキZというわけだ。

モリワキZ 〜ワイン・ガードナー車〜

モリワキZ 〜ワイン・ガードナー車〜

グレーム・クロスビーやワイン・ガードナーのライディングによって、数々の栄冠に輝いたモリワキZ。今日でも、カスタムフリークのお手本的な存在であり、多くのファンを持つ

モリワキモンスターの先行開発車的な存在であるモリワキZ。モリワキスーパー1000とも呼ばれるもので、他メーカー製のスペシャルパーツを用いることなく、独自のアイデアとチューニング技術、自社製パーツで作られたレース専用車だ。当時はエンジンオイルやタイヤの性能がまだ低く、タイヤの性能をフルに引き出せるよう車体作りを工夫したという。その過程において、フレームをノーマル改から自社製クロモリパイプフレームへと進化させている。試行錯誤を経て、チューニングしたエンジンのパワーを活かし、ライダーが安心して戦えるよう作り上げられていった。

モリワキモンスター 〜ロジャー・マーシャル車〜

モリワキモンスター 〜ロジャー・マーシャル車〜

TT-F1仕様ともいえるモリワキモンスターのスプリントレーサー。当時としては、1000ccの4ストロークエンジン車が速く走れることに驚きだったとか

世界初のアルミフレーム車として新聞にも掲載されたモリワキモンスター。先行開発車としてクロモリパイプフレーム仕様車があり、そのデータやジオメトリーのノウハウを活かしたアルミ角パイプフレーム車として製作されたものである。いわゆる鉄フレームのモンスターの車重180kgに対し、163kgと大幅な軽量化が図られている。このモリワキモンスターにもさまざまな仕様があり、全英選手権などに参戦したロジャー・マーシャル車は、イギリスでは伝統的な右チェンジ方式を採用していた。当時のレースレギュレーションに合わせたフルカウルスタイルとなっているため、ネイキッドのイメージはないが、ベース車はZ1000となる。

モリワキモンスター 〜ワイン・ガードナー車〜

モリワキモンスター 〜ワイン・ガードナー車〜

耐久仕様のハーフカウルと、排気温度を抑えて排気効率のよさをねらうフォーサイトマフラーが印象的なワイン・ガードナー車。予選にて2分14秒76のコースレコードをマーク

スプリントレース仕様であるロジャー・マーシャル車に対し、耐久レース仕様となっているワイン・ガードナー車。ベース車であるZ1000と比較してトレール量を増加、より動くリヤショックとしたモリワキ理論の車体は、モリワキモンスターに共通するもの。しかし、フレーム補強やサスペンション設定などは、ライダーの好む乗り味となるよう大胆に手直しされ、その仕様は大きく異なる。耐久レースマシンゆえにヘッドライトが必須となり、関連するパーツなどの重量増は避けられないところだが、車重はロジャー・マーシャル車より2kg増の165kgに抑えられている。メーカー系ワークスマシンもおよばなかったほど鈴鹿8耐で活躍を見せた。

取材協力モリワキエンジニアリング
電話番号059-370-0090
URLhttps://www.moriwaki.co.jp
KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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