ヨシムラ
カワサキが26年ぶりとなる優勝を飾った2019年の鈴鹿8耐。前回の優勝は1993年で、マシンは、ワークスチームの伊藤ハム レーシング カワサキが走らせたZXR-7だ。この1993年の鈴鹿8耐勝利車であるZXR-7の詳細を紹介する。
勝利への強烈な欲求がマシンの随所に宿る
ZXR-7は80年代後半に登場し、国内外のレースで活躍。1991年には世界耐久選手権を制するなど輝かしい実績を築いた。このマシンは1993年の鈴鹿8耐を制したモデルで、スコット・ラッセル/アーロン・スライト組が207周をラップし、カワサキに初となる鈴鹿8耐優勝をもたらした。
現在の鈴鹿8耐は1,000cc市販車ベースのマシンで競われているが、1993年当時は750cc市販車のエンジンを使用しつつ、そのほかはどんな改造もOKというTT-F1カテゴリーのマシンで競われていた。そのためZXR-7は、当時レプリカとして販売されていたZXR750Rとはまったく異なる存在ともいえる。ZXR-7が鈴鹿8耐優勝を飾った1993年はTT-F1マシンのラストイヤーで、翌年より鈴鹿8耐は改造範囲がより厳しく制限されるスーパーバイクカテゴリーに移行する予定だったため、このマシンはTT-F1最後の鈴鹿8耐勝利マシンとしての顔も持っている。
ZXR-7は、エンジンにZXR750Rを使用しており、フレームはオリジナルの極太ツインスパーとするなど、車体剛性を意識した作りとなっている。足まわりなど、そのほかの箇所にも、当時の最先端の技術がいたるところに投入されており、90年代のスーパーバイクにおけるカワサキの快進撃の礎を築いたマシンともいえるだろう。
夏目健司
東海地区で雑誌の取材業務に携わる。社会ネタから街ネタ、スポーツ取材と、どんな現場にも駆けつけます。
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