ヨシムラ
カワサキ乗りの個性的なバイクライフを紹介していく連載企画『人とバイクの交差点』。今回は夫婦でカワサキ車に乗り、カフェを経営する2人を紹介しよう。
愛車を眺めつつ美味しいコーヒーが飲める店
“トリプルカフェ”と聞いてピンとくるライダーも多いだろう。そう、カワサキの名車・マッハシリーズのエンジン形式が由来である。そしてオーナーの濱西正義さんが20年以上愛している愛車も、マッハシリーズの750SSだ。
「学生のころはバイクブームだったので、16歳になったらバイクに乗るのがあたり前という時代でした」
16歳の誕生日前から教習所に通い、中型バイクを乗り継いだ。18歳でクルマの免許を取ると一時的にそちらに興味が移る。再びバイクが生活の中心になったのは20代半ばのこと。70〜80年代のバイクに興味を持ち、KH250を入手した。
「インパクトがありました。レプリカより遅く、手をかけてあげないと走らないんですが、なんとも言えない乗り味があったんです」
2ストローク3気筒の魅力にハマった瞬間である。そしてもっとも排気量が大きい2ストローク3気筒エンジンのバイクに乗りたいと思い、750SSを購入した。
「整備は基本、自分でやっていました。でも購入当初はインターネットがない時代で、情報は雑誌や口コミが中心。トラブル対処もなかなか難しく、遠くに行くと帰ってこれなくなるかも、という不安がありました」
750SSを前に試行錯誤する濱西さんの姿を見て濱西理沙さんは″すごいなぁ”と思っていたという。
「私は原付から始まったのですが、そのころは中型二輪免許を取ってビッグスクーターに乗っていました」
スクーターを便利な足として乗っていただけの理沙さんには、濱西さんが750SSをメンテナンスしている姿は強く印象に残ったのだろう。
そのうちに理沙さんもギヤ付き車に興味を持つようになり、250TRをゆずり受ける。仲間が続々と大型へ乗り替えていくと理沙さんの負けず嫌いが発揮され、教習所に通い大型二輪免許を取得したという。
「最初はハーレー883に乗りました。でも1年後くらいに“私が乗りたいのはコレじゃない”と思って」
濱西さんが750SSに乗っていたので、昔ながらのバイクらしいスタイルに馴染んでいた。そのため空冷Zシリーズのどれかにしようと考えたのだ。
「無知ながら最初はZ2がいい!と思ったんですが、またがると丸いタンクが大きく感じちゃって。すると角タンクのマシンもあるよって紹介されたのがZ1Rでした」
シャープでカッコよく他人と被らない。“これだ!”と思い購入。しかし旧車は簡単に乗りこなせなかった。乗りにくさから泣きそうになったこともあったが、乗りやすくカスタムしてもらい「今は絶好調です!」と笑顔だ。
バイク乗りがくつろげる癒しの空間を実現
そんな2人がカフェをオープンしたのは5年前のこと。濱西さんが20代のころから思い描いていた“店頭にバイクを置けるカフェをやりたい”という夢から始まっている。濱西さんはカフェを単なる夢物語で終わらせるつもりはなかったのである。そして5年前に“今がそのときだ”と判断した濱西さんは20年近く勤めていた会社を辞めて行動を開始する。少し不安はあったが、思い切って新たな一歩を踏み出したのである。
すると今までなかなか見付からなかった、バイクを眺めながらコーヒーが飲めるという理想の物件と出会えた。そして店内を装飾しメニューを考案。料理長は理沙さんだ。「最初は私が?って思いましたが、彼にはできないこともあったし」。食品の販売をしていた経験も活かして濱西さんをサポート。カフェは徐々にカタチになっていった。信念を持って進めば夢は叶う。そんなコトを感じさせてくれるストーリーだ。
カフェをオープンしてみると多くのことに気付かされた。
「常連さんがツーリング帰りに仲間と立ち寄ってくれたり、わざわざ九州の人が訪ねてきてくれたり。そのたびにカフェをやってよかったなぁと思いました」
今は店主催のツーリングやイベントなども行なっている。そのたびに多くの人が集まるのは、2人の笑顔と温かい雰囲気があるからにほかならない。トリプルカフェでは、今日も多くのバイク乗りが美味しいコーヒーや食事を楽しみながら、憩いの時間をすごしているはずだ。
プロフィール
濱西正義さん
“バイクが身近にあるカフェを開きたい”という夢を叶えるべく、長年勤めていた会社を辞めてトリプルカフェを立ち上げた。当時の同僚にカフェの構想を話したら笑われたそうだが、強い信念を持って新たな一歩を踏み出し夢を実現した。
濱西理沙さん
お店では料理長と呼ばれている、笑顔がまぶしいムードメーカー。「初めての人でも入りやすい雰囲気を目指しています」と話してくれた。また女性オンリーのツーリングを企画するなど、女性ライダー目線に立ったイベントも開催している。
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。