最高速度と旋回性を高め王座を狙う
先代のNinja ZX-10RのJSB1000仕様は、鈴鹿のバックストレートで他を圧倒する300km/hオーバーを記録したが、新型はそのエンジンにさらにクランクシャフトの軽量化をはじめとしてバルブやピストン、カムシャフトの改良を行ない、ピークパワーや低中速域でのトルクを向上させている。もちろん、これは新型の量産車のエンジンの話であるが、JSB1000では大幅にエンジンを改造することができないため、量産車の状態でのエンジンパフォーマンスの向上はイコールでJSB1000マシンにとっても大きな武器となり、さらなる最高速アップも期待できるのだ。また、2016年型のNinja ZX-10Rではエンジンと車体のバランスも重要視されており、高い旋回性を求めてフロントステアのハンドリングをねらう車体設計となっているのが特徴だ。
そして先代より搭載されたトラクションコントロールをはじめとする電子制御はさらに次世代へと進化。小型IMU(慣性計測装置)の数値を基に、トラクションコントロールやローンチコントロールなどを高い次元で制御する。これらはJSB1000マシンでも機能しており、ハイパワーなエンジンでありながら、ライダーが扱いやすいマシン特性を構築することができるのだ。

JSB1000仕様のNinja ZX-10R(渡辺一樹選手が乗車した26号車)。グリップ力の高いスリックタイヤに交換されるため、量産車の状態から足まわりを中心にパーツの変更が行なわれている。一方、外観は量産車のシルエットをたもつ
アッパーカウルとシートカウルは2016年モデルで大きく変わっているところであり、前後の写真を見ると、昨年からさらにスリムになっていることがわかる
各種スイッチ類が並ぶハンドルまわり。キルスイッチをはじめ走行中にマップやトラクションコントロールの効き具合を変えるスイッチも備わる。また、ピットレーンのスピードリミッターも装備
電子制御スロットル(フライ・バイ・ワイヤ)の採用により、従来のようなワイヤの取りまわしはなくなり、1本のワイヤのみがつながる形となっている
メーターは変更されており、イタリアのマニエッティ・マレリの多機能メーターを使用している。上部に並ぶ6つのLEDライトはシフトアップモニターとなる
フロントカウルはノーマル形状と同様のもので、素材はカーボン製に変更。ヘッドライト部は耐久用にヘッドライトが装着可能だが、今回カバードされており、ライトはステッカーだ
フロントフォークはカワサキとショーワがSBKで共同開発したバランスフリータイプで、純正とよく似ているがボトムケースなどは削り出しで作られたレース専用品となっている
ガソリンタンクは横からの形状がノーマルと同じであれば容量の拡大は可能となっており、シート下にタンクを伸ばし、容量を増やしている
ステップはチームグリーンオリジナルで、オートシフターも装備されている。ピボットまわりはレギュレーションで許可されているガゼットを追加
キャリパーはブレンボで、ローターもブレンボを使用する。もちろん、これらもレース専用品となる。なお、ローターはコースにより径を変える
フロントフォークの減衰調節はボトムケース側で伸び側、圧側両方の調節が可能。ボトムケース下のツメはタイヤ交換時のフロントスタンド用フックだ
クラッチレバー下にはリヤブレーキを左手で操作するためのハンドブレーキを装備している。使用頻度は多くはないそうだが、右コーナーで使うことが多い
リヤブレーキもブレンボを使用しており、センサー類はそのまま装着。ホイールはマルケジーニで、ホイールサイズは16.5インチ
チェーンはRKで、サイズは520を使用する。スイングアームにはリヤタイヤを交換する際にチェーンを掛けておくステーも備えられている
ラジエターはスペインのメーカー、タレオを装着している。全日本でもトップチームが使用しているメーカーのもので、鈴鹿8耐でも使用
スイングアームは純正とは違い、スタビライザーがスイングアーム下側にある形状。スイングアーム下にはチェーンに指などを挟まないためのガードも装備
リヤショックは取り付け方法は変えられないため、ショックユニットとリンクを交換している。ショックユニットはフロントフォークと同じくショーワを使う

エキゾーストシステムはビートで、柳川・渡辺両選手とも同仕様のモノが装着されている。サイレンサーのカラーは2016シーズンからライムグリーンとなった