エンジン系統の雑学

カワサキのエンジンに関して、系統ごとに構造や整備など、現場メカニックの視点から細かく解説していく

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ヨシムラ

マフラー交換&ボアアップのポイント

マフラー交換

エンジンの充てん効率を高めるために、古くから用いられてきたカスタム手法。素材にもよるが、マフラー交換は、大幅な軽量化を見込め、運動性能も向上する。ノーマルマフラーが入手困難となっている現代では、補修の一手段として、アフターマーケットのマフラーを装着することもある。

整備性

エンジンの性能維持に欠かせないオイル交換。ノーマルマフラーは1番&2番、3番&4番のフロントパイプがフレームのアンダーループ沿いに振り分けられているため、ドレンボルトやオイルフィルターへのアクセス性が良い。集合マフラーの場合は、取り回しが整備性に大きく影響する。

ウエマツ4-1

数多くの空冷Z系に携わってきたウエマツでは、カスタムパーツとして自社製の4-1マフラーを用意している。特徴は簡単に着脱できること、フランジ部の適切な剛性とデザインにある。テールパイプの3次元的な振り出し方で、サイドビューもスマート。

フランジ

マフラーのヘッダーパイプをエキゾーストポートにしっかり押さえつけるのがフランジの役割である。その性質上、排気漏れを嫌ってオーバートルクで締め付けられがちだが、集合マフラーへ交換する際は、フランジの剛性不足によってスタッドボルトが変形や破損することがあるから注意が必要だ。

サイドスタンドストッパー

マフラー交換車では、意外な盲点となっているサイドスタンドストッパー。Z1000以前のフレームでは、タンデムステップの支持パイプまでサイドスタンドが跳ねあがり、保護対策をしなければパイプが傷だらけになってしまう。また、スタンド自体に跳ね上がりを抑える加工やステーの追加を施すのは、結果的にバンク角の減少につながってしまうため、ウエマツでは行なっていない。

[注意!]クリアランス

市販の集合マフラーは、そのメーカー各々の考え方でデザインされている。ヘッダーパイプやフロントパイプを大径にすると、路面とのクリアランスが確保しづらくなるため、その対策としてエンジン下部とのクリアランスを犠牲にしたデザインもある。エンジン下部に寄せるほど、オイル交換などの整備性が悪化することは想像に難くないが、タイトにデザインしすぎて、フロントパイプがオイルパンに接触してしまうマフラーもあるそうだ。


ボアアップ

エンジンのパワーアップ術として、古くから用いられてきたボアアップ。排気量の増加による加速力の向上が見込める。ただし、全域でパフォーマンスアップを図るためには、シリンダーヘッドやクランクシャフトにも手を加えなければならない。ウエマツでは、チューンナップというよりも補修の意味合いで実施することが多いそうだ。

ST-2カムと加工

ボアアップを機に、出力特性を見直す意味で組み込むことがあるというハイパフォーマンスカムシャフト。無加工で組み込めるヨシムラST-1は、ウエマツでもよく活用しているという。稀によりハイリフトとなるST-2を組むこともあるが、シリンダーヘッド側も要加工となる。

ボアアップの限界例

シリンダー内径はどこまで拡大できるのか?については、車両の用途によってことなる。公道で末永く愛用してもらうことを目的に作業する場合は、耐久性を考慮してスリーブ厚2.0mmまで、ピストン径で言えばφ70mmまでに抑えたいという。

取材協力ウエマツ
住所東京都八王子市宇津木町728-1
電話番号042-696-6667
URLhttps://www.uematsu.co.jp
KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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