ヨシムラ
GPZ750/900Rのフレームといえば、特徴的なダイヤモンドフレーム。しかしこのダイヤモンドフレームは次世代に継承されることなく、時代の波に埋没してしまうことになる。特異的ともいえるGPZ750/900Rのフレームに今回は注目してみた。
さまざまな形状をトライし、たどり着いたダイヤモンド
Z1の開発後、改良を加えて脈々と受け継がれてきた空冷並列4気筒エンジンにも、ついに限界が近付いてきたと感じたカワサキは、次期フラッグシップマシン、そして新型大排気量水冷エンジンの開発に着手する。その結果として生まれたのがGPZ900Rであることは、今さら言うまでもないだろう。それまでにも数々のフレームタイプを車体設計に用いてきたカワサキ開発陣も、次世代の覇権を確立させるため、さまざまなテストを繰り返すことで適正なフレーム形状を導き出そうとしていた。そして採用されたのが、GPZ900R登場以前はもっともビッグバイクに適切だと思われたダブルクレードルタイプではなく、ダイヤモンドタイプのフレームであった。
このダイヤモンドフレームは、フレーム単体の剛性だけで強度をたもつのではなく、エンジンもフレーム強度を持たせるための構成パーツとして位置付けるものだ。そのためラバーマウントによってエンジンを搭載するのではなく、必然的にリジットマウントを採用することになるものであった。そのためには振動の少ないエンジンを採用する必要があるのだが、新型水冷エンジンの開発に成功したカワサキ開発陣は、それまで大排気量車での採用に踏み切らなかったダイヤモンドフレームを採用するに至る。それは軽量で、かつコンパクトな車体と、低重心化を推進するために有効でもあったためだ。
ここでユニークなエピソートが一つある。ダイヤモンドフレームの採用を決定する以前、GPZ900Rはダブルクレードルタイプのフレームで開発が進められていた。しかし「どこでもやっているフレームなんて、おもしろくも何ともない」と、何とテスト中にアンダーフレームを切り取ってしまったのだ。そのままテストをしてみると、適度な“しなり”が生み出されており、バランスも悪くないことが判明。そういうキッカケをもとに、ダイヤモンドフレームの採用に踏み切ったのだという。
理論上の計算に加え、実地の経験と結果を基にして開発が進められたGPZ900Rのフレーム。次世代のGPZ1000RXや、さらに後継のZZR系にはその形状は受け継がれなかった。しかしその独特のフィーリングは、今なおGPZ750/900Rファンを魅了している。
開発中の偶然が生んだGPZフレーム
こんなフレームも登場「ZZR1400」
スリムさを追求した結果、ZZR1400に採用されたアルミモノコックフレーム。1970年代のKR500が祖となり、技術的には1999年のZX-12Rで市販化に成功する。しかし、その実用化まではGPZ900R同様、試作と実験を繰り返す困難な道程だったという。