ヨシムラ
オイルのにじみ
その昔…といっても1970年代〜80年代くらいだろうか。エンジンオイルの滲みを点検していると「入っている証拠だから少しはやむを得ない」などと、冗談交じりに語られることの多かった。オイルにじみは、まったく無い状態が好ましい。もしあるとしたら、どこからにじんでいるのか? それは滲みなのか漏れなのか? どのように修理すればいいのか? 対策すればいいのか? など、正しい見立てをできるかどうかが大切だ。Z1/Z2系では、シリンダーヘッド周辺とジェネレータカバーをチェック。漏れのある場合は、ガスケットなどの劣化が考えられる。なお、ガスケットなどの劣化は、水冷空冷を問わず現行車も含めて起こり得ることで、漏れが発生したら修理すればよいというレベルの消耗品扱い。特に不安視するような問題ではない
カムかじりを防ぐオイル溜まり
Z1系エンジンでは、シリンダーヘッド側にオイルタブが設けてあり、長時間のサイドスタンド駐車でもオイルが流れ落ちにくくなっている。これにより再始動時のカムかじりやカムシャフトの摩耗対策としている。ちなみに、Z1系エンジンのカムシャフトは、プレーンメタル支持を採用。メタルの減りがカムシャフトの振れにつながる。振れが大きくなると、リフターの上でアウターシムが暴れるパタパタ音のようなノイズを発生する。Z1系はメタルとカムシャフト交換だけで補修できる
ポイントチェックとオイル交換の関係
Z1系エンジンでは、点火制御にポイントブレーカー方式を採用しており、定期的な点検と調整を要する。摩耗するのはポイント接点とポイントアームのヒールで、オイル交換を2〜3回するタイミングでポイントまわりの点検をすると良い。アイドリングが高くなり、回転の落ちが悪くなった場合は、ポイントブレーカー裏側にあるガバナーのスプリングヘタリをチェックする。これはポイントレスとなっているJ系エンジンにも言えることで、ガバナーを採用している車輛に共通する注意点。アイドリングが途切れるなど失火状態がある場合は、コンデンサのパンクを疑う。いずれも部品単体で交換補修できるようになっている
私のオイル管理
年間1万キロ超の稼働具合となっている私のZ750FOUR。街乗りからツーリング、富士スピードウェイのスポーツ走行、取材の移動手段としても乗るが、定期的な点検整備だけで納車当時の好調を維持している。良好なコンディション維持に欠かせないのは、エンジンオイルへのこだわり。交換サイクルは3000km毎を目安としているが、発進停止を頻繁に繰り返す、渋滞に何度もハマるなど、運転状況がシビアコンディションの場合は、交換サイクルを早めるなどして柔軟に対応している。また、シフトチェンジの際に渋さを感じるようになった時は、できるだけ早期に交換を心掛けている。
オイル交換に併せてフィルターも交換する場合は、購入店であるウエマツに持ち込む。フィルター交換なしの場合は自宅でDIY作業。その理由は、フィルターやOリングなど、オイル交換作業に関連する部品も必要となるから。交換時のオイル量は、ロアーとアッパーレベルの中間くらいに収まるよう調整している。オイルの種類は、パラフィン基油の鉱物系または半合成油を好んで使っている。これは私自身のバイク経歴とそれまでの整備データが元になっていて、鉱物系のオイルは性能が緩やかに降下し、性能維持限界に至るまでの期間が長いから。長時間の高負荷または長距離運用の多い私は、スプリントレース的な瞬発力よりも耐久性を重視している。粘度は10W-40から15W-50の間を選ぶ。他の粘度でも試してみたが、結果的にノーマル指定と同レベルがいいようだ
KAZU 中西
1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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