ヨシムラ
東京や神奈川から房総半島に向かう際に重宝するのが、ETC割引対象のバイクだと640円で東京湾を横断できる東京湾アクアラインだ。このアクアラインの建設にあたって川崎重工が関与していたのをご存知だろうか?
建設当時、世界最大の海底道路トンネル用だった
神奈川県川崎市から東京湾を横断して千葉木更津市へとつながる高速道路“東京湾アクアライン”が今回のテーマである。総延長は15.1kmあり、川崎側9.5kmがトンネルで木更津側4.4kmが橋になっていて、そのつながる部分に人工島である海ほたるパーキングエリアがある。そのトンネルの方にカワサキは絡んでいるのだ。ちなみにトンネルは、東京アクアトンネル、橋はアクアブリッジと呼ばれている。
海底トンネルを建設するのには、トンネルをあらかじめ作ってからそれを埋める沈埋トンネル工法とトンネル形状に合わせた円筒のシールドマシンを地底に下ろしてモグラのように掘り進むシールドトンネル工法の2種類がある。多くの船舶が行き交う東京湾で海底掘削・埋戻し作業や沈埋函の曳航・沈設作業をするのは困難との判断から、東京アクアトンネルは、シールドトンネル工法が採用された。そしてそのモグラのように掘り進むシールドマシンを川崎重工が製造したのだ。
アクアトンネルは、海面下最大60mの海底を海ほたる、川崎浮島の取付部、そしてそのほぼ中間となる風の塔に用意された3ヶ所の立坑(垂直に掘り下げられた坑道)から8基のシールドマシンを用いて掘進し、地中でそれぞれ掘り進んできたトンネルを接合させてできている。その掘進には高水圧と軟弱地盤という条件下で切羽(きりは・採掘などの現場)の安定と止水を確保するために、当時海底道路トンネルでは世界最大となる直径14.14mの円筒状密閉型大口径シールドマシンが使用された。シールドマシンは、先端に約1200枚の超硬合金製の刃がある円形の掘削部分が、約2分30秒で1回転しながら、高圧の泥水を使用してくずれないように押さえられた土を削り取る。泥水と一緒になった土はポンプで排水されて地上の処理プラントで掘削された土と泥水と分離し、泥水は切羽に戻される仕組みになっている。さらにマシン後方では1.5m進むごとに、11個のセグメントと呼ばれるトンネルの構造体となる鉄筋コンクリート製ブロックによってリングが組み立てられ、トンネルを構築していた。これらの掘削、泥水の給排水、セグメントの組立は、すべて自動化されていたとのこと。そして8機のマシンのうち3機を川崎重工が用意していたのだ。
建設には莫大な建設費がかかったうえ、当初の推定交通量を大幅に下回る結果でかなり問題になっていたが、その対策の一つとして利用者数を増やすために、09年8月から14年3月いっぱいまでETC搭載車の割引が社会実験として実施された。その後、正規の通行料金は2000円弱に戻ったが、千葉県知事森田健作氏の尽力などもあり、千葉県と国が割引き分を負担する形で、割引きは続いている。ちなみに千葉県が昨年1月に発表した14年4月~16年9月の2年半の経済波及効果は、千葉県において約869億円、首都圏全体では約1155億円とのこと! たった15・1㎞の道路によって、これだけの効果が生まれるってすごいことであり、その建設にカワサキが関与していたのもオーナーとしてはうれしいよね。
アクアライン/海ほたる 技術資料館 うみめがね
今回はトンネルなので、実際にアクアトンネルを走ってもらい“このトンネルに川崎重工の技術が使われたんてだ”と思ってもらうしかない。8区間のどの3ヶ所を担当したのかは、残念ながら調べられなかった。ただ、14.14mの直系がどんなサイズなのかは、海ほたるの1階、川崎側の端にある澄川喜一氏の環境造形作品カッターフェイスを見て頂けば一目瞭然だ。また、そのカッターフェイスのすぐ近くに技術資料館うみめがねがあり、そこで東京アクアラインについて模型や資料、ボードで丁寧に説明されているので、興味があるならぜひのぞいてみるべし。余談だけど、海ほたるの1Fそば・うどん かずさのワカメ、ワカメの香りがしっかりとあるので、小腹が空いたときはぜひ。