ヨシムラ
青森県に生まれ、住み続けて58年。そろそろ還暦も見えてきたというTさん。若いころからカワサキ好き、Z2大好き人間で、それは今に至るまで続いている。
そんなTさんが40年前、非常にあこがれていたのが城東カワサキだ。城東カワサキと言えば、70年代から80年代のカワサキ販売店を代表するショップである。ただ筆者の依田にとっては、謎が多いショップなのだ。城東カワサキとは実際どのような業者なのか。かつては、東京都足立区に店舗を構えていたのだが、現在、社屋はなくなっている。移転したのか? など不明なことが多い。
Tさんは40年ほど前、雑誌の広告で城東カワサキを知った。その広告は2ページにわたり、多くの海外製パーツが掲載されていた。そのどれもが、当時の日本では手に入らないと思われるパーツだ。一例を挙げると、FRP外装キット、ジャーディンのマフラーなどなど。Tさんは一度、城東カワサキを訪れたいと思っていた。
「二十歳くらいのころ、電車で青森から行きましたよ。新幹線はまだなかったな。地下鉄乗り継いで駅から歩いて、確か足立区でした」
城東カワサキを訪れたTさんは、想像していた店内とはかなり違い、愕然とした。
「国産中型車の中古バイクがズラッと並んでいて、パーツはあまりなかったんです。広さも今でいうコンビニくらいで小さい」
店員に「青森から来たTと言いますが、Zが大好きでZのパーツが欲しくて…」と話しかけると、「今はほとんど在庫してないんだよねえ」という返事だった。残っていたパーツといえば写真で掲載した3つだった。メッキファンネル、フライングKの刻印入りゴールドのカムカバープラグ、そしてドラッグレース用と思われる二丁掛けのスプロケチェーンセットだ。その時もらったステッカーを含め、Tさんはその3つのパーツを今でも使わずに秘蔵している。
店内の奥にはZのレーサーがあったそうだ。
「城東カワサキが鈴鹿8耐で走らせたマシンがホコリを被ってました。モリワキモンスターベースと思われるもので写真バシバシ撮りましたよ」
Tさんと話した限りでは城東カワサキが足立区のどこにあったのかはイマイチ不明。Tさんは、当時の雑誌広告も探してくれたのだが、見つからずで、住所はわからず。このままではスッキリしないのでもう一人、東京に住み続けてるZファンのKさんに聞いてみた。
「城東カワサキ、懐かしいね。僕が行ってたころは完全なパーツショップで、バイクは置いてなかった気がするな。いつの間にかなっくなっちゃったけど足立店の黄色と黒の建物は当時のまま残ってますね」
え、そうなんですか! Kさんによれば、JR綾瀬駅から綾瀬警察署に向かう道に店舗跡があるという。現地に急行して撮ってきたのがこの写真だ。建物を見る限り、現在も使用されてないようで、現在の持ち主などは不明。店の広さはコンビニ…よりはだいぶ大きいような?
TさんとKさんの話の食い違いは何なんでしょう? 謎は深まるばかりです(笑)。
Tさんいわく「国産中型車の中古バイクがズラッと並んでいて、パーツはあまりなかったんです」。Kさんいわく「完全なパーツショップで、バイクは置いてなかった気がするな」。この食い違いは何か? 謎は深まるばかりである。
依田 きい
取材記者。主に二輪専門誌の取材と執筆に携わっている。オーナーズクラブなどに多くの人脈を持ち、とくに空冷Z系のライダーと多くの交流を持つ。現在所有する車両はZ900LTD