鈴鹿8耐を戦い抜いた技術をストリートに投入
バイク乗りならば“レーシングスペック”という言葉にあこがれを持ったことがある人も少なくないだろう。サンスターがヨシムラと共同開発したローター“ワークスエキスパンド”は鈴鹿8耐や各種レースにおいて、ヨシムラレーシングチームが採用するまでに至ったまさにレーシングスペックのパーツだ。
しかし、もちろんレーシングパーツそのものではない。レースシーンでつちかったノウハウをフィードバックし、かつストリートでの使用に最適な耐久性を持たせたのがこのローターなのだ。
そのため重視されたのが、開発者が“ローターを換えただけでワンランク上のキャリパーにしたかのような制動力とコントロール性”と語るように、性能面の追求だ。フローティング化による操作性の向上や絶対的な制動力の確保はもちろん、その操作性を維持するための工夫が随所に散りばめられている。
まず直線状のグルーヴはローターとパッドとの摩擦によって生じたブレーキダストを効率的に排出し、つねにパッドとローターがフレッシュな状態で接することを追求している。またローターに入る多数のスリットにより、放熱性にすぐれ、熱ダレに強い構造となっている。ブレーキタッチの変化を抑え、安定したブレーキ操作が可能となるのだ。
「つねにフレッシュなパッド面を使用するというのはウェーブディスクと同じ設計思想ですが、パッド面がディスクとつねに触れているためパッドの摩耗が激しくなると思う人もいるでしょう。しかしブレーキダストが残った状態だとローターに対する攻撃性とパッドの摩擦が増えるため、つねにクリーニングした方が結果として性能も保持され、かつローター、パッドともに長もちするのです」とはヨシムラの開発担当川口氏。
なお、サンスターからも同様のアイテムが販売されるが、ヨシムラリミテッドとの違いはフロントのフローティングピンや各部に入るサンスターとヨシムラのロゴ、グルーヴ形状だ。これらの仕様の違いによる性能面における差はないという。
今回はカワサキ車両用に開発されたが、今後さまざまなメーカー・車種用を開発していくとのことなので、他車オーナーもこれからの2社の動向に注目したい。