ヨシムラ
ついに出た! スーパーチャージャーを搭載したニューモデルの登場だ! しかも最高出力300psオーバーという化け物だ。昨年の東京モーターショーで、カワサキがスーパーチャージャーエンジンを参考出品した時から、いつかこの型のエンジンを積んだモデルが出るだろうと思っていたが、まさか300psオーバーとは、予想をはるかに超えるできごとである。
モデル名はニンジャH2Rで、クローズドコース専用の量産車である。一般公道走行仕様車は11月6日から11月9日まで開催される今年のミラノショーで公開される予定だ。なお、カワサキイチバンでお伝えしていたとおり、カワサキはすでにニンジャH2スペシャルサイトをオープンさせている。このサイトにはニンジャH2の文字が表示されており、一般公道走行仕様車の車名はニンジャH2と予想される。
“誰も体感したことのない加速力の提供”
これがニンジャH2Rの開発の出発点だ。バイクに乗るさまざまな楽しさのなかで、加速力は重要な要素であるとカワサキは考え、このテーマを掲げた。
現在、スーパーチャージャーエンジンを開発する目的はいくつかあげられるが、カワサキはパフォーマンスアップを第一目的として開発に踏み切った。
誰も体感したことのない加速力を実現するには、可能な限りのパワーが必要不可欠と、カワサキは判断した。ただし、より大きなパワーを求めると、排気量増大の一途をたどり、軽量コンパクトなエンジンからかけ離れてしまう。目指していたのは“最大出力300ps・排気量998㏄・並列4気筒のエンジンサイズ”だった。これを実現するために、カワサキはスーパーチャージャーエンジンを開発したのである。
ニンジャH2Rで採用したスーパーチャージャーはカワサキ製であり、川崎重工業グループのガスタービン&機械カンパニー、航空宇宙カンパニー、そして技術開発本部からの支援を受けたモーターサイクル&エンジンカンパニーの設計者により設計された。なお、カワサキはすでにジェットスキーでスーパーチャージャーエンジンを採用しており、そのエンジンで最高出力310psを発揮している。このようなことを考えると、カワサキのバイクにスーパーチャージャーエンジンが採用されることは必然的だったのかもしれない。
300psオーバーの出力を受け止める車体にも新たな工夫がほどこされている。ニンジャH2Rの車体開発の目的は次の2点だ。
“サーキットでの超高速域において、ライダーに挙動の不安を感じさせず、安定性を確保すること”
“さまざまな回転半径の複雑なコーナーに関しても純粋にライディングが楽しいと思わせる旋回性能”
一般的に、ロングホイールベースとすることで、高速安定性は簡単に確保することができる。その反面、旋回性能は損なわれてしまう。ただしニンジャH2Rは、ホイールベースを最適化して、その相反する特性を高次元で両立させているのである。
車体の骨格を担うフレームには新設計のトレリスフレームを採用する。この採用は、サーキットで高速ライディングした時、フル加速、フルブレーキ、そしてコーナリングなど、すべての状況おいて、安定性と柔軟性を確保するためとのことだ。
エンジンと車体同様、外装などのボディワークにも川崎重工業グループの別事業カンパニーの最新技術が応用されている。一例がカーボン製のアッパーカウルとロアウイングで、これらは超高速域で車両の安定性を確保するため、航空宇宙カンパニーの技術を応用して形状が決定されている。
まさにニンジャH2Rは、川崎重工業グループが一丸となって開発にあたった技術の結晶なのである。最後に、カワサキが送る“ニンジャH2Rからのメッセージ”をつづる。
「モーターサイクル・テクノロジーは、時代とともに高度になり続けています。しかし、カワサキの理想は、高度なテクノロジーを使ってライダーの主体性を奪い、便利で快適なだけのマシンを作ることではありません。“高性能なマシンを自在に操り、ライディングを楽しむ”こと、ライダーの単純かつ、根源的な欲求を満たすことがニンジャH2Rにとっての使命ではないかと考えています。
モーターサイクル・テクノロジーが時代とともに進化するようにカワサキイズムも進化しています。
制御しにくいジャジャ馬を馴らすことから、サラブレッド、それを誰しも乗りこなせること、すなわち“高性能なマシンを自在に操り、ライディングを楽しむ”ことに価値観の転換があるのです。
ニンジャH2R。それは、カワサキからライダーへのメッセージです」
スペック一覧
エンジンタイプ | スーパーチャージド・水冷4ストローク4気筒 |
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排気量 | 998cm3 |
過給機タイプ | セントリフューガル式スクロールタイプ |
最高出力 | 約300ps |
フレームタイプ | トレリス構造 |
タイヤ | (F)120/600R17(レーシングスリック) (R)190/650R17(レーシングスリック) |
発売時期&価格 | 未定 |
※量産時、仕様変更の可能性あり