ヨシムラ
国内二輪ロードレースの最大規模となる鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下、鈴鹿8耐)が開催された。例年であれば7月最終週、2022年と2023年は8月第一週に開催されていたが、今年は7月21日(日)に決勝が開催された。三重県は鈴鹿8耐レースウィークに梅雨明けしたばかりで、ここ数年の鈴鹿8耐では一番の猛暑ではないかといえるほどの暑さに見舞われた。決勝当日、午前8時30分からのウォームアップ走行をコースサイドで撮影していても、すでに太陽の光が体に突き刺すような暑さで、オフィシャルと苦笑いするしかないほどだった。
今年の鈴鹿8耐は、カワサキ応援団からすると少しばかり物寂しい。というのも、参戦しているカワサキ系チームは4チームであり、例年に比べて若干少ないのだ。今年の参戦チームはカワサキプラザレーシングチーム、カワサキウェビックトリックスター、KRP三陽工業&RSイトウ、チーム38。今年はこの4チームを応援することに絞った。
カワサキプラザレーシングチームにはSSTクラス優勝、カワサキウェビックトリックスターには世界耐久選手権のシリーズランキング上位を獲得するべく、何としても結果を残してほしいと願っていた。しかし、カワサキ系チームにとっては厳しいスタートとなった。カワサキプラザレーシングチームは26番グリッド、SSTクラス5番手から、カワサキウェビックトリックスターは18番グリッドからスタートとなる。さらに、カワサキプラザレーシングチームは岩戸亮介選手が序盤と中盤に2度転倒して順位を30位台まで落としてしまう。加えて、カワサキウェビックトリックスターもライダーの体調不良により、80周ほど周回した後、ピットインしたままとなり、5時間を経過したあたりからピットアウトするも30位台後半まで順位を落としてしまう。
このカワサキオフィシャルチーム2チームが苦戦する中、KRP三陽工業&RSイトウとチーム38は、スタート後は目立ったトラブルなく順調に周回を重ねる。KRP三陽工業&RSイトウは、柳川 明選手がケガの影響で決勝に出場できない中のスタートとなったが、22番グリッドからスタートすると、17番前後まで順位を上げ、そのままの順位をキープして走行し続ける。一方、チーム38は43番グリッドという後方順位からのスタートだったが、30位前後まで順位を上げると、以後、順調に周回を重ねていく。
カワサキ系4チームの動向は最後まで大きく変化することなく、カワサキプラザレーシングチームは35位、カワサキウェビックトリックスターは42位、チーム38が30位、そして今年のカワサキ勢最上位となるKRP三陽工業&RSイトウは16位で、8時間のゴールを迎えた。結果だけを見れば、カワサキ勢にとって今年の鈴鹿8耐は厳しい結果となった。
ただ、本当に厳しい結果だろうか。内容を見れば、将来に向けた明るい希望の兆しをしっかりと感じられた。その兆しとは若手の進出だ。カワサキプラザレーシングチームは18歳の彌榮 郡選手が参戦ライダー最年少であり、26歳の岩戸亮介選手がアドバイザー的な立場でライダーを引っ張った。チーム38は10年ほど前まで鈴鹿8耐に参戦していた時はベテランスタッフでチームを構成していたが、今年はチームスタッフを見る限り当時のメンバーはピットにおらず、20代から30代前半くらいまでの若手スタッフで挑んだ。そしてKRP三陽工業&RSイトウは、柳川選手が出場できなくってしまった今年、27歳の佐野優人選手と、25歳の佐野勝人選手の2人で、目立ったトラブルなく8時間を走り切り16位を獲得した。今年、カワサキの世代交代を見た。
さらに、カワサキは鈴鹿8耐のセレモニーにて、水素エンジン搭載バイクのデモ走行を世界で初めて一般公開した。2030年の実用化に向けて開発を進めており、開発の進捗は予定通りだという。
今、カワサキの車両開発とレースが新時代を迎えようとしている。