2309KWTインタビュー_メイン

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ヨシムラ

FIM世界耐久選手権(以下、世界耐久)に参戦するカワサキ系チームの中で、第一人者といえるチームがチームSRCカワサキフランス(以下、SRC)だ。2018-2019シーズンにはシリーズチャンピオンも獲得している名門チームである。このSRCが昨シーズンでレース活動を休止したことを受け、トリックスターレーシング代表の鶴田竜二氏がSRCを引き継ぎ、カワサキ ウェビック トリックスター(以下、KWT)とチーム名を新たに、今年から世界耐久にフル参戦している。KWT監督の鶴田氏に、今年の世界耐久での手応えと、最終戦となるボルドール24時間の展望を聞いた。

2023シーズンの世界耐久は全4戦が開催され、現在、第1戦ル・マン24時間、第2戦スパ24時間、第3戦鈴鹿8耐が終了し、最終戦となる第4戦ボルドール24時間を残すのみとなった。レースファンにとって、直近の鈴鹿8耐は記憶に新しいところだろう。戦績に関してKWTは順に9位、5位、12位を獲得し、シリーズランキングは5位につけている。

「SRCはもともと強いチームですからね。経験豊富なメカニックがいてライダーも速い。極端な話、私がそれほど奔走しなくても上位を獲得できると思っていました。ところが、現実は違って、たとえ優秀なスタッフがいても、それだけでは勝てない。まとめなければなりません。これまでも認識していたことですが、結果を出すためにチームをまとめるということは非常に難しいことだと、改めて思い知らされました。したがって、もっと強いリーダーシップを発揮することが、今の私の課題です」

スタッフからはさまざまな意見が挙げられ、それらを的確な方向にカジ取りしなければならない。しかも、KWTはSRCをベースとしたカワサキフランスが管轄するレーシングチームである。そのため、一部を除きすべてフランスのスタッフである。過酷な耐久レースの場で、言語や習慣の異なる海外スタッフを、適切にまとめていくのが今の鶴田氏の仕事となる。

「カワサキフランスからしてみれば、今の結果に対して言いたいことはあるのでしょうが、とくに細かな指摘はありません。『カワサキフランスのチームはKWTに任せたのだから、あとはしっかりやってくれ』といった感じです。レースのことは一任されているので、こちらとしてもとても活動しやすいですね」

現在、2戦をヨーロッパで戦っているが、ヨーロッパでは耐久レースは文化のような存在であり、熱狂的なファンも多い。SRCといった名門チームともなればなおさらだ。

「ふがいないレースをしていると、SRCのファンが怒るんです。中には『日本人を外せ!』と、直接言ってくるファンもいるくらいですから」

SRCはフランスで開催される世界耐久での勝率は高く、今年のKWTの結果を厳しく評価するファンも多い。

「もちろんレースは勝利するために参戦していますし、シリーズチャンピオンをねらって活動しています。ただ、24時間耐久レースは結果だけではありません。それぞれが目的を持ち、チャレンジし続ける美学もあると思います。この美学は、日本もフランスも共通の意識ではないでしょうか」

チャレンジし続けるという点で、鶴田氏は1990年に鈴鹿8耐にライダーとして初参戦した。以後、コンスタントに鈴鹿8耐に参戦すると、ライダーもしくは監督として1999年から今年まで毎年参戦している。

「鈴鹿8耐しか参戦してなかった時代は、レースの戦略を鈴鹿8耐一本に絞っていました。ただ、今は世界耐久というリーズ戦でシリーズチャンピオンを目指して戦っているので、戦略はその時代と異なります。鈴鹿8耐でたとえ上位に入れなかったとしても、確実にポイントを取りに行く。そんな構想でいます。そうはいっても、ライダー鶴田としては、いい結果を出したい。そもそも鈴鹿8耐で勝つために世界耐久に参戦したわけですからね。私にとって鈴鹿8耐は特別な存在ですよ」

今年の鈴鹿8耐でKWTは序盤5位を走行していたものの、リヤサスペンションのリンクと燃料系のトラブルで順位を落としてしまう。鶴田氏は、チームの実力は高く上位を十分狙えたと語り、結果に対して非常に悔やんでいる。

「24時間耐久なら、仮にトラブルが発生しても後で挽回できる余地があります。ただ、鈴鹿8耐は耐久レースといっても、スプリントに近いですから、小さなトラブルで結果が大きく変わってしまうことがあります。もちろん、どのレースもミスをしないように準備をしますが、鈴鹿8耐はとくにミスをしない仕組み作りが必要です」

チームの拠点はフランス。鈴鹿8耐も、もちろんフランスのスタッフ主体で挑んだ。そして9月16日・17日に最終戦のボルドール24時間を迎える。

「狙うのは優勝です。チームの総合力からすれば勝ちに行けます。ただ、レースに勝つためにはチームの総合力以外の要因が絡んでくることがあります。したがって、我々は粘り強くプッシュし続けるしかありません。我々はカワサキのオフィシャルチームを任されているので情けないレースはできない。メーカーの威信をかけて戦わないといけない」

KWTで長期的なレース活動を計画する鶴田氏。その初シーズンで初勝利をつかみに行く。




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