ヨシムラ
チーム力と耐久フル参戦の底力を見せるも、結果につながらず
例年以上に猛暑のニュースが報じられる今年の夏、“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第44回大会(以下、鈴鹿8耐)が開催された。昨年はコロナ禍での開催のため、ピットウォークの制限など観戦方法に規制が敷かれていたが、今年は、ほぼ規制がなく開催された。その今年の鈴鹿8耐にカワサキ系チームは、カワサキ プラザ レーシング チーム(以下カワサキプラザ)やチーム カワサキ ウェビック トリックスター(以下KWT)をはじめとした6チームが参戦した。
NST(昨年はSST)クラス2連覇に期待がかかるカワサキプラザだが、金曜日の予選で、エースライダーの岩戸亮介選手がなんと転倒。しかも脳震盪を起こしてしまい、ドクターストップにより今年の鈴鹿8耐は走行できなくなってしまった。そのため、決勝は岡谷雄太選手と佐野優人選手の2名で戦うこととなった。一方、世界耐久にフル参戦しているKWTは、予選で健闘するものの残念ながら予選12位となりトップ10トライアルの出場を逃してしまう。カワサキ勢としては厳しい状況の中、決勝を迎えることとなった。
前日の天気予報では、決勝の鈴鹿市は午前が曇り時々雨、午後は雨で降水確率が60%という、荒れた天気でのスタートが予想された。ただ、空にはところどころ分厚い雲があるものの、おおむね晴れといえる天気の中のスタートとなった。好スタートを切ったのはKWTだった。ライダーは渡辺一樹選手で、1ラップ目に8位まで順位を上げ、以後も安定した走りを見せ、8位から10位を維持しながら走行していく。一方、カワサキプラザはライダー2人体制という厳しい状況ながら、トラブルのない安定した走りを見せ、NSTクラス2位をキープしつつ周回を重ねていく。
山科カワサキ オートレース宇部 YIC AW EJとYSSマーキュリーカワサキプラザ吹田が前半にリタイヤしてしまったものの、他の4チームは安定した走りを見せていたかと思われたが、後半にトラブルが発生してしまう。スタートから4時間半が経過したころ、KWTのリヤサスペンションにトラブルが発生。ただ、ピットインした後の修理が早かった。3、4分で修理すると、14位でコースに復帰する。また、ゴールまで残り30分のころ、KRP三陽工業&マツバ RSイトウが転倒。修理後に復帰するも、順位を大幅に落としてしまう。KRP三陽工業&マツバ RSイトウは予選24位でスタートし、一時は13位まで追い上げていただけに、この転倒は非常に悔やまれる。
スタート時は、後半天気が荒れることが予想されたが、午後6時すぎに一時雨がパラついたくらいで、天気はくずれることなくゴールを迎えた。カワサキ系チームの戦績に関しては、カワサキ最上位はKWTの13位、次いでカワサキプラザが19位でNSTクラス2位となった。戦績だけを見れば厳しい結果といえるが、カワサキプラザは大きなトラブルなく走行し、持ち味である高いチーム力を発揮した。また、KWTはリヤサスペンションこそトラブルに見舞われてしまったが、瞬時に修理してコースに復帰し、その後は順調に周回するなど、世界耐久フル参戦チームの対応力を見せた。来年は、それらの底力をより発揮し好戦績を残してほしい。
なお、鈴鹿8耐と併催されるカタチで、土曜日にニンジャチームグリーンカップが開催された。このレースは、21年からレースビギナーに向けてカワサキが企画しているNinja ZX-25Rのワンメイクレースだ。今回鈴鹿8耐と同時開催ということで、実に贅沢な企画が盛り込まれた。その一つが表彰式だ。なんと鈴鹿8耐と同じ表彰台が使用され、上位3人は、その表彰台で賞品を授与されたりシャンパンファイトを繰り広げたりしたのである。参加者は忘れられないレースになったに違いない。カワサキのなんとも粋な計らいである。