ヨシムラ
11月10日から13日まで一般公開される国際展示会、ミラノショー(EICMA)。8日から一般公開に先立って各出展者のプレスカンファレンスが開催されているが、カワサキはそのプレスカンファレンスでカワサキモータースの社長兼CEO、伊藤 浩氏が登壇。電動二輪車(EV)、ハイブリット車、水素エンジン車について言及した。EVとハイブリット車は実際の車両も公開されている。
EVモデルはフルカウルモデルの「Ninja EV」とネイキッドモデルの「Z EV」の2タイプが用意。両車ともにヨーロッパのA1ライセンスに準拠する電動コミューターと位置付けられており、取り外し可能な最大3.0kWhの大容量バッテリーを持つ。発表されたモデルはプレ・プロダクションマシンとのことなので厳密には試作モデルとはなるが、2023年に顧客が利用できる実際の生産マシンになると言及されていたので、ほぼこの形で市販化されることは間違いないようだ。
Ninja ハイブリットと呼ばれたハイブリットモデル「Ninja HEV」はモーター駆動とガソリンエンジンを組み合わせたモデルとなる。EVとハイブリッドの切り替えを行なえるようにしており、経済性と走りを両立させることで、通勤からスポーツライディング、ツーリングまで、環境に配慮した楽しいバイクを目指して開発されたという。
また、Ninja HEVには川崎重工のリバーマークが採用されている。リバーマークはNinja H2シリーズやNinja ZX-10Rなど、最新鋭・最先端モデルに与えられている特別なマークと位置付けられているが、それがハイブリットモデルに与えられることで、カワサキのカーボンニュートラル社会実現に向けた本気度がうかがえる。
Z1が発売された当時から、カワサキはブローガスをリサイクルし、無鉛燃料で走るエンジンで未来を見据えていたという。そのベストへの追求と革新は、現状ではバランス型スーパーチャージドエンジンを採用するNinja H2 SXのように進化を遂げてきたが、カーボンニュートラルを目指すという大胆なプログラムをスタートさせるために、カワサキはさらなる進化を”Green power initiative”と呼び、そのカウントダウンにはF1界で活躍し、2007年にはカワサキファクトリーのモトクロスチームで代表を務めたキミ・ライコネン氏を招聘し、壇上に設けられたスタートボタンを伊藤社長とプッシュした。
EVやハイブリット普及に際してエネルギー事情、エネルギー供給インフラ、充電インフラは、地域によって大きく異なり、また国によっても異なる。しかし、製品のライフサイクル全体を通して、カーボンニュートラルの視点を持つことが重要だとカワサキでは考えているという。そこでカワサキは実現可能な範囲でカーボンニュートラルを推進することを約束すると明言。これは二輪車だけでなく、ATVやエンジンのみを動力源とする大型のものも含まれるとのことだ。
これにはバイオ燃料を使用することでカーボンニュートラルを達成することができるとし、さらにカワサキでは水素を燃料とするエンジンの研究開発にも取り組んでいくとのこと。そして水素を燃料とする二輪車については、2030年代後半の実用化を目指しているとの発言も。
ではガソリン車の未来はついえるのかというと、ユーザーの支持がある限り、ガソリンエンジンを搭載したモデルも開発・生産を続けていくという。カワサキは2024年と2025年のモデルイヤーには約30のモーターサイクルを導入する予定だが、この約半分はグローバルに販売すると発言。グローバルというのはガソリンエンジンに対して規制が厳しいヨーロッパでも発売するという意味と捉えることができるし、すなわちガソリンエンジン車がメインストリームに留まり続けるともいえるのではないだろうか。
そしてカンファレンス内で少しだけ言及があった水素二輪車だが、「Ninjaハイドロゲン」として同日カワサキモータースが公開した動画内でCGが公開。具体的なスペックなどは不明だが、従来のガソリンタンクの位置ではなく、リヤのサイドバッグ部分に貯蔵タンクを内蔵するイメージだと触れられている。
このほか、EICMA2022でのカワサキブースでは新型Ninja H2 SXやヴェルシスなどの展示も予定されている。そちらに関しては別記事として紹介したい。