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ヨシムラ

2022 マン島TTレース DAOカワサキレーシング

新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていたマン島TTレース。2022年6月4~10日、3年ぶりに開催されたこのレースで、カワサキ勢が表彰台複数回を獲得する好成績を得た。

霧や雨で有名な“山岳”区間を持つマン島は、地理的条件から今年は特別に天候が回復すると予想される日にレースが行なわれるなど、ドライコースになるよう日程調整が行なわれた。

カワサキのマン島TT挑戦の先陣を切ったのは、オフィシャルサポートチームであるDAOカワサキレーシングチームとライダーのディーン・ハリソン選手。マシンはスーパーストッククラスとスーハーバイククラスの両方の仕様となるNinja ZX-10RRに加え、スーパースポーツクラス用のNinja ZX-6Rで参戦した。マン島TTは複数のクラスが開催され、それぞれのクラスに登録することが可能。ハリソン選手に限らず、複数クラスにエントリーする選手もいるのだ。

そもそもマン島TTレースは日本での一般的なロードレースと異なる点が多い。専用サーキットではなく公道をクローズドしてコースを設定した”公道レース”として知られるほか、1周60㎞という長大なコース設定、スタートも全ライダーが一斉にスタートするのではなく10秒ごとにライダーがコースインしてのタイムトライアル方式。コース上のさまざまなインターバルで経過時間も評価され、さらにレース中はスリップストリームやオーバーテイクを駆使して順位を上げるさまを見られるレースとなっている。

6月4日(土)に開催された最初のレースでは、Ninja ZX-10RRを駆るハリソン選手が1周目に3位となり、すぐにリズムに乗ることができた。このコースでもっとも好きなパートのひとつであるラムゼイ(ダグラスに次ぐ島の主要都市)では2位となり、山岳セクションに挑戦する準備が整った。

「プラクティスウィークに四輪車でコースを回ったことがありますが、レースでは車線の反対側を走ることが多く、あまり役に立たなかったですね。四輪だとバイクでは気付かないようなことに気付かされることもありますが、結局のところ、バイクに乗ってノリノリで走るのが一番いいですね」とその際の心境をハリソン選手は語っている。

給油やタイヤ交換を含む6周のレースは、総走行距離226.5マイル(364.5km)で、ハリソン選手はレース平均速度129.8マイル(208.8km/h)を記録して2位となった。

2022 マン島TTレース DAOカワサキレーシング

続くスーパースポーツクラスでは、ハリソン選手のライディングスタイルに合わせてNinja ZX-6Rを調整した。

「Ninja ZX-6Rでは、フェアリングに隠れている時間をできるだけ多くし、できればよりスムーズに走れるようにしなければなりません。グレントラムマンでは、ここ数年で木々の葉が生え替わり、道路の補修やアスファルト下に伸びる木の根による段差も増えたので、コースの多くを学び直さなければなりませんでした。Ninja ZX-6Rでは、1周あたり数秒しかタンクからアゴが離れていなかったと思います。レース平均速度が126マイル(約202㎞/h)を超えたのは、僕と優勝者だけでしたから、2位は上出来でした」

“ビッグバイク”での次のレースはスーパーストッククラス。ハリソン選手は終始安定した走りだったものの、4位で表彰台を逃している。

マン島TTレースウィークの水曜日にはスーパーツインクラスのレースが開催され、ハリソン選手からバトンタッチした他のカワサキ勢が好成績を残した。Z650ベースのマシンを駆るPreZレーシングチームのポール・ジョーダン選手は平均速度115.49マイル(約185.86㎞/h)で3位に入賞した。このスーパーツインクラスではトップ10にカワサキが5台入り、カワサキにとって2022年マン島TTのレースでもっとも多くのマシンが上位に食い込んだレースとなった。

2022 マン島TTレース DAOカワサキレーシング

DAOカワサキレーシングの次のレースは6月10日(金)、スーパースポーツクラスのレース2となった。2周に短縮されたレースでハリソン選手は3位をキープしてゴール。またしても表彰台を獲得した。「小さいバイクでは、できるだけスムーズで、コーナーが途切れることなく続き、タイムロスをしないことが重要です」とそのレースをハリソン選手は振り返る。

レースウィーク最後のレースとなったシニアクラスは、コンディションの変化と金曜日の大雨の影響で土曜日に開催された。シニアクラスはマン島TTレースウィークの最高峰イベントであり、すべてのライダーが好成績を目指すレースでもある。 ハリソン選手はマン島TTの伝説的存在であるジョン・マクギネス選手に続き、2位をキープ。レース平均速度129マイル(207.6km/h)を超えた2人のライダーのうちの1人であるハリソン選手は、6周の間に1度だけでなく2度もバードストライクを受けながら、最終的に表彰台に上るという快挙を達成した。

「最初の鳥は、クロンク・イ・ヴォディ(Cronk-Y-Voddy)ストレート終点のハンドレイズカーブで僕にあたりました。スクリーンを突き破って僕の顔にね。その後、レース中は頭を引っ張られるように風が吹き続けていましたが、さらに2羽目の鳥が襲ってきました。今度は鳩で、バイクの左側に激しくぶつかり、フェアリングが破損してブーツの上で分解されてしまいました。足を車体の横に押し付け、バタバタしないようにしながら完走できたので、2位という結果には満足しています」

マン島TT復帰戦となったDAOカワサキレーシングは、全レースで上位に食い込むなど、カワサキチームとライダーは大きな成果を上げた。

ハリソン選手はレースウィークを終えると、早くも来年のマン島TTについての抱負を語っている。

「チームのみんなは伝説的な存在で、僕に素晴らしいバイクを提供してくれます。プラクティスウィークには少し問題がありましたが、レースウィークにはどのマシンもミスなく走ってくれました。正直なところ、僕にはもっとできることがあると思っています。ウィーク中にはタイヤの種類を変えることで注意がそらされた部分もありました。今年学んだことを活かして、来年の大会に向けてパフォーマンスとハンドリングの改良に取り組みます」




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