ヨシムラ
高速型サーキットも堪能できる驚異のフルカウルクォーター
昨年の東京モーターショーで世界初公開されるや否や二輪業界の注目の的となったNinja ZX‐25Rだが、ようやくその全貌が明らかになった。一言でいうなら、250㏄クラスのレベルをはるかに超える高次元の作りこみで、250㏄クラスでありながらハイスピードサーキットを走らせても十分楽しめる走行性能を備えたモデルだ。それでいて、日常の使い勝手も考慮されているというのだから、開発は試行錯誤の連続だったに違いない。その開発過程のエピソードについて、開発者にインタビューしてきた。
「モデルコンセプトは“SCREAMING IN-LINE4 POWER(スクリーミング・インラインフォー・パワー)”で、高回転域で炸裂するパワーと高周波エンジンサウンドが大きな特徴です。ラインナップのポジションはNinja ZX‐10R/6Rと同じNinja ZX‐Rシリーズ直系のスーパースポーツです」
大きな特徴となるエンジンは、カワサキの250㏄クラスでは、2007年までラインナップされていたバリオス-Ⅱ以来の並列4気筒エンジンだ。もちろん完全新設計のエンジンだ。
「高回転域の性能はもちろんのこと、日常での扱いやすさを考慮して低中回転域にも力を入れました。いうなればZXR250の高回転域のエキサイティングなフィーリングと、バリオスの低中回転域の扱いやすさを両立させたようなエンジン性能を実現させています」
高次元に作りこまれたエンジンは、フィーリングだけでなく数値も他を抜きんでている。最高出力は45ps、現在ラインナップされる量産250㏄クラスでは最も高い数値だ。この最高出力は、80年代に台頭したハイパワーレーサーレプリカと同じ数値であり、過去から現在までに発売された量産250㏄クラスの最高値となっている。
「この数値は、開発当初から掲げられていた目標で、クラス最高の出力をねらいました」
これら機能的性能の他、バイク乗りならエンジンに期待したい性能がある。それがエンジンサウンドだ。
「カワサキには音を作りこんでいく部署もあるんです。この部署で試行錯誤しながら、並列4気筒らしいやる気の出る甲高いエンジンサウンドを作りこんでいきました。これも開発目標の一つでした」
電子制御機能に関して、Ninja ZX‐25Rは量産250㏄クラスでは初めてトラクションコントロールを採用する。3モードからなるトラクションコントロールだが、ここで、失礼ながら疑問が生じる。安全性を高めるためのモードならともかく、スポーツ走行時にコーナリング中のトラクションを制御するモードが、250㏄クラスのモデルにおいて、いったいどのような場面で有効活用されるのか。
「そのモードは、開発ライダーと同等の走行レベルで、スロットルを思い切り開けてサーキットを走った時に介入するレベルです。自信を持った仕上がりですが、その性能をわかっていただくには、かなりハイペースで走る必要があります。つまりNinja ZX‐25Rは、そのスピード域でのコントロール性も高い次元をねらっているのです」
車体に関しては、開発者がこだわったのはハンドリングだ。高速安定性を確保しつつ、サーキット走行も楽しめる軽快なハンドリングを構築することが車体の開発コンセプトだ。
「車体の主要部分にはNinja ZX‐10Rの設計思想をフィードバックしています。素早く倒しこんでバンクしている時間を長くとり、タイヤをつぶしてしっかりグリップさせながら旋回していく。このコーナリング方法を重視しました」
さて、インタビューではサーキット走行を意識している旨の話題が、随所に出てきた。ただ、サーキットといっても、カワサキ所有のオートポリスなどハイスピードサーキットから、中・低速コーナーを中心としたサーキットまで多種多様なものが存在する。一般的に量産250㏄クラスであれば、走行性能のおいしいところを楽しめるサーキットは後者で、前者は車両よりサーキットがオーバースペックになってしまうこともある。
「Ninja ZX‐25Rならオートポリスのフルコースでも十分楽しめます。性能を存分に活かすことができるでしょう」
ハイスペックな250㏄クラスが台頭した80年代レーサーレプリカブームから30年強。現代に恐るべき250㏄モデルが誕生した。
完全新設計の並列4気筒250㏄エンジンを採用するNinja ZX-25Rが9月10日(木)から全国で発売開始! 価格は82万5,000円から