ヨシムラ
ZZR1100の登場から16年経った2006年、世界最強フラッグシップの称号を受け継ぐ、新生ZZRが誕生した。だが、新しく生まれたZZRは、時代の変化を受け、従来とは違った新たなステージへ向かうのであった。
最強イコール世界最速といった時代は、すでに終焉を迎えていた
2005年の東京モーターショーでベールを脱ぎ、翌年から発売が開始されたZZR1400は、ZX-12Rから最強の称号を受け継ぐ現代のフラッグシップ。しかし、2001年から300km/hの自主規制がほどこされ、最強イコール世界最速といった時代は、すでに終焉を迎えていた。さらに排ガスや騒音規制の強化など、時代のニーズに即した環境性能に対する課題も、ZZR1400には課せられていたのだ。
それに対してカワサキは、完全新設計エンジンをZZR1400に投入する。モトGPマシンZX-RRにおいても、インライン4にこだわったカワサキの集大成ともいえる、ハイパフォーマンスなパワーユニットだ。インパクト十分のそのスペックは、最高出力190psを叩き出し、ラムエア加圧時には200psにも到達するまさにモンスター。そんな脅威のスペックを誇るパワーユニットに託されたのは、最速を目指す300km/hオーバーの世界ではなく、最強の加速力であった。
キレイな2次曲線をよどみなく描きながら、大柄な車体をグイグイと前に押し進める爆発的な加速力は、まさに最強の名に違わないもの。その一方で、わずか2,000rpmという低回転域から10.0kg-mものビッグトルクを発生させる。だが不用意にスロットルを開けても、コントロールできるキャラクターも与えているため、低回転域を多用する街乗りでもとても扱いやすい。中回転より上は、ZZRの名に恥じない強烈な吹け上がりを感じさせるのだった。
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強烈な加速力と、常用域での扱いやすさ
排気量はZX-12Rよりも150cc以上も拡大しているが、ZX-10Rと同じ傾斜鋳造法によるシリンダー、クランクケース一体成型の採用や、クランク、インプット、アウトプットの各シャフトを、三角配置することなどで、軽量コンパクト化に成功。ZX-12Rとほぼ同じエンジン幅を獲得した。そのエンジンを新設計のモノコックフレームに搭載することで、1400ccとは思えないスリムな車体も実現し、高い空力特性の獲得や低重心化、バンク角も確保するのだ。
出力面ばかりではなく、ハンドリングもクセがなく実に素直。マスの集中化による重心バランスも絶妙で、コーナー進入時、クイックに倒れすぎることなく、ライダーの動きに車体が自然と付いてくる。コーナリング中も前後の荷重バランスが取れているため、トラクションもしっかりとかかり、車体がぐらつくような不安定さもない。ただしサーキット走行を主眼に置いているワケではなく、スーパースポーツのようなキャラクターを与えてはいない。あくまで街乗りや高速走行といった一般走行をメインにすえながら、速度域を忘れさせる安定感と安心感を感じられるのだった。
インパクト十分の強烈な加速力と、常用域での扱いやすさ。最強の宿命を背負ったカワサキ歴代のフラッグシップだが、新たな局面を迎えて、ZZR1400は違った次元で、最強を具現化したのであった。
ZZR1400が発売になった2006年(平成18年)の出来事
トリノ五輪開幕、女子フィギア荒川選手金メダル獲得/第1回WBC開催、日本優勝/W杯ドイツ大会開催/小泉内閣任期満了で退陣、90代首相に安部晋三就任/イラク、フセイン元大統領の死刑が執行される/映画:『ハリーポッターと炎のゴブレット』/ヒット曲:レミオロメン『粉雪』
とじる
マシンギャラリー
「ZZR1400」のスペック一覧
全長×全幅×全高 | 2,170×760×1,170(mm) |
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軸間距離 | 1,460mm |
シート高 | 800mm |
乾燥重量 | 215kg |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒 |
エンジン排気量 | 1,352cc |
ボア×ストローク | 84.0×61.0(mm) |
最高出力 | 190ps/9,500rpm 200ps/9,500rpm(ラムエア加速時) |
最大トルク | 15.7kg-m/7,500rpm |
タイヤサイズ | (F)120/70-17 (R)190/50-17 |
燃料タンク容量 | 22L |