カワサキ名車列伝

カワサキが誇る伝説の名車の数々を美しい写真とともに紹介

1987GPX400R

ストリートにおいての 快適操作性を追求したGPX。ロードスポーツとしての最高を求めたイクイップメント。

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ヨシムラ

時代の風潮に流されるのではなく、自らの信念を貫きとおすこと。ユーザーにとってカワサキ車とは何か? をカタチに表した意欲作。最新技術を投入しつつカワサキらしさも込められたその象徴は車名に“X”を冠した。

85年ごろ、バイクブームがスパークし、一気に加速する。時代の主役はレーサーレプリカであり、GPもしくは国内選手権においてワークスチーム体制を敷いているメーカーは、“レーサー譲りの技術”とうたう市販車を投入し始めていた。その皮切りとなったのがTZR250やFZ400Rであり、RG250ΓやGSX-R、VF400Rなどが追従していった。当時のカワサキはレースでのワークス活動を休止しており、したがって純然たるレーサーレプリカはなかった。市場投入したのはGPZ400R。カワサキの考えるバイク作り=全方位に対しクラスを超越したロードスポーツを具現化した1台で、ワインディングやサーキットでも通用するスーパースポーツとして登場させた。

GPZ400Rは、大方のバイク業界関係者の予想を上回る好調なセールスを記録。非レーサーレプリカでありながら、多くのユーザーに受け入れられた。このトップセールスは翌年も維持し、ヒット商品となるのはレーサーレプリカだけではないことを証明した。だが、世の風潮はレースブームに大きく傾いており、カワサキの“GPZ神話”にかげりが見え始める。トレンドはフルカウルのクラウチングスタイルであり、TT-F3ルックスがより注目を集めるようになっていた。

激戦の時代に誕生した未来を予感させるミドル

そんななか、カワサキは次世代マシンの製作に着手。テーマはニンジャ作りの過程で発見した空力の重要性とライダーフレンドリー。いわゆるグランツーリスモ思想であり、ハイスペックレーサーレプリカだけがバイクではない! と言わんばかりの1台を作り上げる。それがGPX400Rである。GPXがカワサキの次世代思想を具現化したシリーズ構成であることは、そのネーミングからも容易に想像できた。これまでは車名に“Z”を冠するのが当然の流れ。しかし空冷時代に“X”を冠した車両が存在した。カワサキが車名に“X”を使用する場合は、未来思想が込められている証であり、それを知るカワサキフリークはGPXの走りに期待した。数字上のハイパースペックよりも乗りやすさを重視したその作り込みは、ZZRシリーズに継承されていく思想であり、ライバル他社が戦う土俵には乗らずその先を見すえる先行開発車であった。

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しかしながら、GPZ400Rが好調な売れ行きを持続しており、結果的に併売される形となる。翌年88年も同様のラインナップとなり、更なる後継機種ZX-4や空冷の究極マシンGPz400F/FⅡ、ハーフニンジャの異名を持つGPZ400S、そしてGPZ400RやFX400Rとも併売される状態となってしまう。GPXが先代ほどのヒットを飛ばせなかったのは、このラインナップの広さにあったのでは? と思える。400ccのスーパースポーツだけでも7機種。世相がそうさせたのだといえるが、今にして思えば異常事態である。時の流れに翻弄された感のあるGPXではあるが、その開発当時につちかった技術や思想は現代マシンに受け継がれている。

ライダーにやさしい車体作りとエアロフォルム

尖ったスペックよりもトータルバランスのよさで勝負する。これがGPX400Rのコンセプトである。重視したのは乗りやすさであり、信頼性の高さはいうまでもない。

エンジンはGPZ400Rがベースとなっている。ピストンはピン横の部分を肉抜きタイプとし、ピンの素材を見直し薄肉化。コンロッドも細身に変更されている。これに合わせてシリンダーヘッドまわりも低フリクション化され、吸気効率の高いエアクリーナーへと設計変更。GPZより扱いやすくシャープな吹け上がりを実現した。クラッチは切れのよさを重視し、フリクションプレートにスパイラル溝を設定。点火システムにデジタル方式を採用し、スタビリティ面でも磨きをかける。

フレームは新強度解析システムCAETを駆使し、メインフレームはスチール製でありながらアルミフレームと同等の強度および軽量さを実現。卵形形状となる“FASTフレーム”を完成させた。リヤフレームにはアルミ角パイプを使用し、シャーシの軽量化に貢献させる。なお、このフレームワーク(2本のトップチューブおよびワイドなダウンチューブとしたダブルクレードル)は、後のゼファーへと受け継がれているあたりも興味深い。

CdA値0・28を誇るフラッシュサーフェスボディは、GPX750Rと同イメージでありGPZ1000RXと同軸上。この空力理論はZZRへと継承されていくわけで、GPXの担った役割は大きいのだ。

GPX400Rが発売になった1987年(昭和62年)の出来事

国鉄が公社114年の歴史を終え分割民営化される/映画、歌謡界で活躍した石原裕次郎が肝細胞ガンのため死去/大韓航空機がビルマ沖で爆破され乗員乗客115名が死亡/利根川進博士が日本人として7人め、医学生理学賞としては日本人初となるノーベル賞を受賞/広島東洋カープの衣笠祥雄選手が2131試合連続出場の世界記録を樹立/主な流行語:億ション/主な公開映画:『トップガン』『マルサの女』

とじる


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