ヨシムラ
最速を生んだメーカーとしての威信。そして、不思議な運命のいたずら。もしも、1969年になんの事件も起こらず、すべてがうまくいっていたら…、希代の名車はこの世に存在することはなく、70年代のバイクシーンも大いに違ったものになっていたはずだ。
Z1の最高遺伝子を相伝した至宝のナナハン
72年、海外で登場し、あらゆる点でライダーたちの絶賛を受けたZ1だったが、750cc以上のバイクを日本国内では販売しないという国内規制のなかにあったライダーたちにとって、Z1は海の向こうのあこがれの存在であった。
そこで、国内の熱烈な要望に応えるために、カワサキは国内販売できるZ1、つまり750ccのZの開発に着手するにあたって、争点になったのは、ベースであるZ1・900ccのエンジンをどう750ccにスケールダウンするかだった。生産サイドのスタッフは、手間とコストを抑えるために、シリンダーボアの縮小のみといった安易な方法を主張したが、設計者サイドは全面的な見直しを主張。
結局、Z2にただならぬ意気込みを見せる設計者側の熱意がとおり、シリンダー、クランク、コンロッドを設計し、作り直した。それは生産時の機械加工ラインを作り直すことでもあり、相当なコストを覚悟してのことだったが、クランクを一新してボア・ストロークともにショート化したエンジンは抜群のバランスのよさを発揮し、Z1と同じフレームとのマッチングもベストで、兄貴分をりょうがするほどのでき映えを発揮することになったのである。
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ついに完成したナナハンの完成形
そして、Z1の登場から8ヶ月後の73年2月、ついに4ストローク4気筒のナナハンとして世界初のDOHCエンジンを搭載したZ2のデビューがはたされた。設計者が極限までこだわり、その作り込まれたエンジンバランスのよさはZ1以上のでき映えであり、単純に兄貴分のスケールダウンと呼ぶには、あまりにも失礼であった。そしてZ2はその完成度に比例するがごとく、またたく間に大人気となり、国内の多くのライダーを虜にすることとなる。
思えば、カワサキが4気筒の750ccに着手したのは67年4月であり、69年のCBショックがなければ71年にナナハンは登場していたはずだった。しかし、もしそうであったら、時代を築くことになるZ2もZ1もこの世に存在することはなく、別のナナハンが生産され、世界におけるバイク史も大きく違うものになっていただろう。もちろん、今となっては、それは推測でしかない。しかし、少なくとも発売から30年以上がたっても、登録保有台数7千台以上を有し、新世紀も元気に走り回るほど、ライダーたちに愛され続けられることになるバイクが登場していたとはとても思えない。それほどまでに、Z2はバイク史のなかで、さん然と輝いている。
750RS Z2が発売になった1973年(昭和48年)の出来事
第4次中東戦争勃発により、日本は深刻な石油危機に/セブンイレブンジャパン創立/全国で魚介汚染発生広がる/ベトナム戦争停戦/セイコーより世界初の液晶デジタル腕時計/ガソリンスタンド初の休日休業を実施/刑事ドラマコロンボの「うちのカミさんがね」が流行語/小松左京の日本沈没がベストセラー/雑誌「るるぶ」「宝島」創刊/漫画「エースをねらえ」「ブラックジャック」連載/TV「子連れ狼」「ひらけ! ポンキッキ」/映画「仁義なき闘い」「エクソシスト」「スティング」アカデミー賞/ジョンレノン、アメリカ移民局から国外退去を命じられる/競馬でハイセイコー10連覇達成
とじる
マシンギャラリー
「750RS (Z2)」のスペック一覧
車名 | 750RS (Z2) |
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全長×全幅×全高 | 2,200×865×1,170(mm) |
軸間距離 | 1,500mm |
エンジン形式 | 空冷4ストロークDOHC並列4気筒 |
エンジン排気量 | 746.34cc |
ボア×ストローク | 64.0×58.0(mm) |
圧縮比 | 9.0 |
最高出力 | 69ps/9,000rpm |
最大トルク | 5.9kg-m/7,500rpm |
変速機型式 | 5段リターン |
潤滑方式 | ウェットサンプ・ギヤポンプ |
オイルタンク容量 | 4.0L |
タイヤサイズ | (F)3.25-19 (R)4.00-18 |
燃料タンク容量 | 17L |
カタログ最高速度 | 190km/h以上 |
定地燃費 | 60km/hにて33km/L |
登坂能力 | 30度 |
最小回転半径 | 2.50m |