ヨシムラ
80年代、レーサーレプリカ全盛のなかにあって、ひと際、異彩を放ったカワサキ初の水冷400cc。その独自性をつらぬいたマシンは、またたく間にベストセラーとなった。それは、ライダーたちが求めていたものが、単純な“速さ”だけではないということの証明といえるだろう。
レーサーレプリカ全盛期、流行りと一線を画すマシンがGPZ400Rだった
79年、カワサキが放った空冷DOHC4気筒のZ400FXは、熱狂的に受け入れられ爆発的なヒットとなった。一度ラインナップから消えたにも関わらず、ファンの要望で再び82年に市場へ戻ってくるという人気の高さであった。その後カワサキは、このクラスのラインナップにZ400GP、同じく空冷4気筒のGPz400を登場させ、安定した人気を博していた。しかし、83年になるとGSX400FW、XJ400ZSなどライバルメーカーの水冷ハイパワー化が次々と行なわれ、84年にはFZ400RやCBR400F、GSX-R400といったサーキットから飛び出してきたようなマシンが登場。2ストローク400に関しては、RG400Γ、NS400Rといったいわゆるレーサーレプリカが続々とストリートに登場したのである。そうした時代のなかにあってカワサキはあえて、趣向の異なるマシンを作り上げた。
続きを読む...
ライダーたちが求めていたものが、単純な“速さ”だけではないということの証明
それが85年に登場したGPZ400Rだった。ひたすら軽量コンパクト化を図って作られたレーサーレプリカ全盛のなかにあって、GPZ400Rは前年の84年にケルンショーで発表され、各国から絶賛されたGPZ600R(600はスチール製フレームであった)と同じボディレイアウトを採用しているため車重は176kgと重く、左右2本出しマフラーやセンタースタンドを搭載するなど、ライバルメーカーの400とは明らかに一線を画す存在だった。とはいえ、このマシンが重いだけのツアラーかといえば決してそうではなく、カワサキクラス初の水冷DOHC4バルブエンジンを搭載。最高出力は自主規制上限の59ps、最大トルクは3.6kg-mと、パワー・トルクともにトップレベルのものであった。
そして特筆すべきはCdA値0.29以下という驚異的な空力特性を実現していることであった。こうした、技術の粋を集められたGPZ400Rは、絶対的な運動性能こそライバルたちにゆずっていたが、反面、街乗りやクルージングでの乗り味は、ライバル不在ともいえる快適性をほこったのである。むしろそうして独特の道を開き、あえて他と違う方向を目指すことで、より、その存在感が際立ったマシンになったといえるだろう。そうしたカワサキのねらいは見事的中し、GPZ400Rは熱狂的に市場に受け入れられ、レーサーレプリカ全盛期のまっただなかにあって2年連続で年間ベストセラーモデルの栄冠を手に入れたのだった。
GPZ400Rが発売になった1985年(昭和60年)の出来事
全日本サッカー選手権、読売クラブ優勝/中曽根首相とレーガン大統領会談/横綱北の海引退/長野でバス転落日本福祉大の学生25人死亡/円相場急落1ドル260円台/世界最長の青函トンネル本抗貫通/柔道山下泰裕引退/東洋一の吊り橋大鳴門橋開通/投資ジャーナル元会長中江滋樹逮捕/NTTと日本たばこ発足/日航機墜落事故
とじる
マシンギャラリー
「GPZ400R」のスペック一覧
全長×全幅×全高 | 2,095×675×1,180(mm) |
---|---|
軸間距離 | 1,430mm |
車重 | 176kg |
エンジン形式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒 |
エンジン排気量 | 398cc |
ボア×ストローク | 56.0×40.4(mm) |
圧縮比 | 11 |
最高出力 | 59ps/12,000rpm |
最大トルク | 3.6kg-m/10,500rpm |
キャブレター形式 | ケーヒンCVK30 |
変速機型式 | 6段リターン |
タイヤサイズ | (F)100/90-16 (R)130/90-16 |
燃料タンク容量 | 18.0L |
サスペンション | (F)テレスコピック (R)ユニトラック |
ブレーキ | (F)油圧式ダブルディスクφ270mm (R)油圧式ディスクφ250mm |