ヨシムラ
それまでのスタイルを180度変え、登場したZ1-R。しかし、その秘めたる力はそれまでの一貫したカワサキのテーマ“最強・最速”を、なんら裏切るものではなく、さらなるポテンシャルアップを成し遂げ、再び究極“Z”の伝説を呼び覚ますこととなった。
大きな賭けとなった、大胆なデザイン路線の変更
1972年、類まれな高性能に加え、ティアドロップ型の流れるようなデザインで周囲の度肝を抜き、大人気を博したZ1。しかし、それから6年後の1978年、カワサキはまるでZ1を否定するかのように、正反対の形をした直線的で角だらけのZ1-Rを登場させた。
その外観はヘッドライトに大柄なカウルを装着し、さらに4 in 1の集合マフラーを備え、フロントブレーキがダブルディスクでリヤがシングルの多孔ディスクブレーキを装備するなど、まさに当時ヨーロッパで人気沸騰中だったカフェレーサーそのものであった。
当時、欧米の若いライダーの興味は、レーサー車両を模したカスタムマシンを公道で走らせることであった。そんな彼らはコーヒーショップを集合場所としたことからカフェレーサーと呼ばれるようになった。彼らのマシンはレーサーが付けていたようなビキニカウルを装着し、速さとスタイリッシュさが自慢の種であったのだ。つまりZ1-Rは当時流行していたスタイルを投入した新進モデルでもあったのである。
続きを読む...
Zの血統を見事に受け継いだハード&ソフトにより、ライダーたちの羨望の的に
1978年。第一次オイルショックや空前のナナハンブームによってまん延した暴走族などの影響でバイクに対する風当たりが強まるなか、カワサキは従来の流麗な曲線を持ったデザインからまったく正反対の直線基調でスリム化を徹底したZ1-Rへと路線を変更する。ホンダが6気筒DOHCのCBXを発売して話題をさらい、他社もリッタークラスのモンスター争いに参入してきた時期である。
それまで国内外でZが圧倒的な人気をほこっていたとはいえ、あまりにも大胆なデザイン路線変更は大きな賭けだった。しかし、この変貌は好インパクトで世界に受け入れられ、そのスタイルは後のZ1000MkⅡ、Z1000R、そして現行のZRXに至るまでカワサキデザインの一端を担う存在となったのである。
それまでカワサキはマッハⅢから脈々と流線の車体にこだわり続け、その姿にあこがれ続けたカワサキファンからは多少不満の声もあったが、やはりそのセンセーショナルな変貌は発売と同時にライダーたちの羨望の的となった。
エンジンはZ1のエンジンを1,015ccに排気量アップしたZ1000A1を搭載。姿・形ばかりでなく、やはり最高速に挑み続けてきたカワサキらしい車両は、ゼロヨンで12秒フラットをマーク。最高速は218km/h以上をたたき出し、さらにデビュー翌年の1979年のル・マン24時間耐久レースではシルエットノーマルクラスで優勝を飾り、そのポテンシャルの高さを世界に知らしめた。
しかし、Z1-Rはそれだけに止まらず名チューナー・モリワキによって潜在能力を存分に引き出されると、世界を舞台に大暴れを開始。その活躍ぶりはZのエンジンがいかにすぐれたものであるかという証明でもあり、Z1-Rが“最高にして最後”というZの血統を見事受け継ぎ、進化をとげていたという答えでもあった。
Z1-Rが発売になった1978年(昭和53年)の出来事
道交法改訂により自動二輪にヘルメット着用の義務付け/ピンクレディー旋風/ナンチャッテ男/ディスコフィーバー/スターウォーズ公開/窓際族/植村直己北極点単独行達成/東京サンシャインビル完成/口裂け女
とじる
マシンギャラリー
「Z1-R」のスペック一覧
全長×全幅×全高 | 2,235×800×1,295(mm) |
---|---|
軸間距離 | 1,505mm |
車重 | 246kg |
エンジン形式 | 空冷4サイクルDOHC2バルブ4気筒 |
エンジン排気量 | 1,015cc |
ボア×ストローク | 70×66(mm) |
圧縮比 | 8.7 |
最高出力 | 90ps/8,000rpm |
最大トルク | 8.7kg-m/7,000rpm |
変速機型式 | 5段リターン |
点火方式 | バッテリー |
始動方式 | セル/キック |
最低地上高 | 125mm |
シート高 | 815mm |
タイヤ | (F)3.50H-18 (R)4.00H-18 |