ヨシムラ
H2カーボンでの旅はナンセンスなのか?
一般道を走り続けて郊外まで足を伸ばす。いよいよお楽しみのワインディングへ突入する。初代よりも低中回転域でのフィーリングが向上しているということは、タイトなコーナーが続くようなワインディングでの操安性も向上しているはずだ。そう考えながらコーナーにアプローチする。ブレーキレバーをにぎるとフロントフォークを沈ませながらスピードが一気に落ちる。このとき“ちょっとかけすぎたかな”と思ったらほんの少し指の力を抜くだけで効き具合を微調整できる。実にリニアでコントローラブルだ。ブレーキタッチは市販車のなかでも最高レベルじゃないだろうか。速度を落としながらねらったポイントに向けて車体をバンクさせていく。そのときに効果的なのがライディングポジションだ。低いセパレートハンドルと動きやすい形状のシート、踏んばりやすい高さにあるステップが操作を容易にしている。キツめの前傾姿勢はスポーツ走行向けといっていい。コーナーの出口が見えたところでアクセルを少しずつ開けていくと、リヤタイヤを適度に押し出しながらなめらかに加速。ドンツキ感はない。ただしそのままアクセルを開けていくと強烈に加速し、次のコーナーが思いも寄らない速度で近付いてきて焦ることになりかねないので注意。ワインディングを走るにはリズムが大切。このバイクは自らの気持ちのコントロールも必要になるのだ。
自制心といえば高速道路を走行するときも注意してほしい。231㎰を発生するスーパーチャージドエンジンは、気を緩めているとアッという間に法定速度をオーバーさせてしまう。今回、ふとバックミラーを見るとパトカーが後方に近付いていた。速度超過ではなかったが、この手のバイクは目を付けられやすい。スピードを適切にコントロールするのもモンスターバイクに乗る者のたしなみだと考えたい。
ニンジャH2カーボンにモデルチェンジする際、トレリスフレームに変更はなかったが、高速道路やワインディングでの走行では終始安定していて不安要素は感じなかった。サスペンションは基本的にスポーツ走行向きのセットアップだが動きは良好。路面からのキックバックをうまく吸収してくれる。そのためシートの厚みがそれほどでもないのにもかかわらず、お尻や腰は痛くなりにくい。もちろんツアラーと比較するレベルではないが、2日間で1,000㎞の行程をこなすのに不自由は感じなかった。だがそれは僕が前傾姿勢のバイクに乗り慣れていることも理由の一つ。誰もがそうではないと思う。以前コツがあるのか聞かれたので記すと、疲れにくくするには前後への動きが重要。時には背を丸めるようにして限界までシートの前に座り、タンクに下半身を押し付ける。そうするとハンドルに手がギリギリ届くくらいまで上体が起き、腰まわりが伸びて血行がよくなるように感じる。あくまで個人の感覚だが、ストレッチ的な効果があるのではないかと思っている。可能な範囲内で腰を前後、さらには左右にまで動かすと、腰が痛くなるのを予防することができる。参考になれば幸いだ。
20年式になるとブレーキシステムのグレードアップのほか、フルカラーTFTメーターの採用やBluetoothによるスマートフォンとの相互通信機能、カーボン以外の外装に、軽微なキズなら自己修復するハイリーデュラブルペイントなどが採用された。
まとめ
エンジン特性が扱いやすくなり装備も充実したが、アクセルを大きく開けたときのワープを彷彿させる過激な加速感や、一人乗りにこだわった装備の数々を見ると、乗り手を選ぶストイックな乗り物であることは変わっていない。カワサキが誇る史上最強のモンスターバイクであることは継承されているのだ。
たそがれ度
燃費
高速道路 | 19.66㎞/ℓ |
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一般道路 | 14.11㎞/ℓ |
ガソリン満タン航続距離 | 240.0㎞ |
Ninja H2 CARBON(2019年モデル)
Ninja H2 CARBON(2019)の主なスペック
車名(通称名) | Ninja H2 CARBON | |
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マーケットコード | ZX1002JKF | |
型式 | 2BL-ZXT02J | |
全長x全幅x全高 | 2,085mm×770mm×1,125mm | |
軸間距離 | 1,455mm | |
最低地上高 | 130mm | |
シート高 | 825mm | |
キャスター/トレール | 24°50′/103mm | |
エンジン種類/弁方式 | 水冷4ストローク並列4気筒/DOHC4バルブ | |
総排気量 | 998cm³ | |
内径x行程/圧縮比 | 76.0mm×55.0mm/8.5:1 | |
最高出力 | 170kW(231PS)/11,500rpm ラムエア加圧時:178kW(242PS)/11,500rpm |
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最大トルク | 141N・m(14.4kgf・m)/11,000rpm | |
始動方式 | セルフスターター | |
点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | |
潤滑方式 | ウェットサンプ | |
エンジンオイル容量 | 5.0L | |
燃料供給方式 | フューエルインジェクション | |
トランスミッション形式 | 常噛6段リターン | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
ギヤ・レシオ | 1速 | 3.187(51/16) |
2速 | 2.526(48/19) | |
3速 | 2.045(45/22) | |
4速 | 1.727(38/22) | |
5速 | 1.523(32/21) | |
6速 | 1.347(31/23) | |
一次減速比 / 二次減速比 | 1.551(76/49)/2.444(44/18) | |
フレーム形式 | トレリス | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック(倒立・インナーチューブ径43mm) |
後 | スイングアーム(ニューユニトラック) | |
ホイールトラベル | 前 | 120mm |
後 | 135mm | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C (58W) |
後 | 200/55ZR17M/C (78W) | |
ホイールサイズ | 前 | 17M/C×MT3.50 |
後 | 17M/C×MT6.00 | |
ブレーキ形式 | 前 | デュアルディスク 330mm(外径) |
後 | シングルディスク 250mm(外径) | |
ステアリングアングル (左/右) | 27°/ 27° | |
車両重量 | 238kg | |
燃料タンク容量 | 17L | |
乗車定員 | 1名 | |
燃料消費率(km/L) | 20.5km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、1名乗車時) | |
15.3km/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時) | ||
最小回転半径 | 3.4m | |
カラー | ミラーコートマットスパークブラック×キャンディフラットブレイズドグリーン(GY2) | |
メーカー希望小売価格 | 356万4,000円(税込) |
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。