ヨシムラ
スポーティさを支える先進の電子制御システム
新たに搭載された電子制御システムを試してみる。スポーツ、ロード、レインと3種類あるライディングモードは、それぞれが適したパワーとトラクションコントロール介入度とが連携している。スポーツモードとロードモードのパワーは変わらず、トラクションコントロールの介入度が異なる。レインモードではスロットル操作に対するエンジンの反応が少し落ち着き、回転の上昇も緩やか。そしてトラクションコントロールの介入も早い。これなら雨の日は必要以上に気をつかわなくてよいはずだと納得した。しかし街中ではロードモードとスポーツモードの違いがよくわからなかった。
その差を感じたのがワインディングだ。Z900はライダーの荷重移動に対して車体の反応が早いため、コーナーをクイックに曲がっていく印象なのだが、少し濡れたコーナーを通過したときのこと。ロードモードでは挙動を乱さなかったが、スポーツモードではわずかに後輪がズレる感覚が伝わってきたシーンがあったのだ。もちろん大きくバランスをくずすほどではない。しかしそれがトラクションコントロール介入度の違いではないかと思ったのだ。というのも後輪のスリップを完全になくすより、わずかにすべらせていたほうがカーブを抜けるのは速いといわれている。そのためロードモードでは安定性を重視してトラコンが早めに介入するが、スポーツモードではグリップのギリギリをねらうためわずかにすべるのではないかと考えたのだ。だがそれを検証するために走り慣れない峠道でリスキーな走りをするわけにはいかない。その後は安全運転に徹したが、トラクションコントロールの恩恵は十分に感じられた。
もう一つ注目したい新技術はスマートフォンとの連携機能だ。詳しくは今月号の巻頭特集を見ていただきたいが、バイクの新しい楽しみ方を知ったのだ。今後はもっと一般的になっていくシステムであろう。
まとめ
2日間で1,000㎞を走って感じたのは、前型から受け継いだスポーティさが電子制御システムによって際立ったということ。さまざまな場面でより安全に高い運動性能を体感することができるのだ。まさに正常進化だと言えよう。ただ、一つ気になったのは800㎞を過ぎたあたりで太モモの付け根付近に軽い痛みを感じたこと。サービスエリアで軽いストレッチをすれば解消するレベルだったが、実は前型でも似たような感じがあった。僕の体格の影響もあるかもしれないので、オーナーは実際にまたがって確認してほしい。
迫力と洗練さを兼ね備えたスタイルと先進の電子制御システムとが融合したZ900(2020)は、スポーティな走行フィールをより手軽に体感できるモデルだった。重厚な走りのZ1000やライトウェイトスポーツ的なZ650とは異なる個性を持つストリートファイターの走りを、ぜひ体験してもらいたい。
取りまわし
たそがれ度
燃費
高速道路 | 23.27㎞/ℓ |
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一般道路 | 17.17㎞/ℓ |
ガソリン満タン航続距離 | 290.6㎞ |
Z900(2020年モデル)
Z900(2020)の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,070×825×1,080(㎜) |
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軸間距離 | 1,455㎜ |
シート高 | 800㎜ |
車両重量 | 213㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒・948㎤ |
ボア×ストローク | 73.4×56.0(㎜) |
最高出力 | 92kW(125㎰)/9,500rpm |
最大トルク | 98N・m(10.0kgf・m)/7,700rpm |
燃料タンク容量 | 17ℓ |
タイヤサイズ | F=120/70-17・R=180/55-17 |
価格 | 104万5,000円(税込み) |
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。