ヨシムラ
1982年のケルンショーにてファンの度肝を抜いたビッグオフローダーKL500。2年後に市販されたのがKL600Rだ。このカテゴリーで水冷エンジンというだけでも驚きなのに、乾燥重量は134㎏に抑えられていた。
エンジン腰上はまるでGPZ900Rと同じ
日本国内ではラージホイールの本格的エンデューロバイクが人気となっていた時代。海外ではその気になればラリーレイドにも出られるタフなビッグオフロードバイクが注目されていた。そのほとんどが空冷エンジンを採用。転倒でラジエターを壊すかもしれないという不安からだ。ところが、同カテゴリーに殴り込みをかけるべくカワサキが用意したのは、GPZ900Rと同じウェットライナー式、DOHC4バルブのシリンダーヘッドを採用する、新開発の水冷単気筒エンジンを搭載したKL600Rだった。そのほとんどは輸出向けとなっていたが、日本国内でも200台のみ限定販売された。1984年のことだ。
翌年はレギュラーラインナップ。前年モデルはキックスターターのみだったが、1985年式はセルスターターも装備していた。エンジンは直径96㎜のビッグボアピストンにストロークは78㎜の564㏄。最高出力は7,000rpmで42㎰をマークした。パワーだけを見れば同カテゴリーの他車と大きく違わないが、走りの性能はワイルド&エキサイティング。その秘密は徹底的に軽量化された車体にあった。オフロードバイクでは常識破りとなるアルミフレームをリヤセクションに採用。乾燥重量は134㎏というGPZ250R並みに抑えられ、他の600㏄ビッグオフローダーと比べて20㎏ほど軽量だった。
いわば250㏄トレール車のような取りまわしに大出力のエンジン。どこを走らせてもおもしろくないはずがない。アドベンチャーライダーの育成に少なからず貢献したはずだ。
カワサキ・オートマチック・コンプレッション・レリースを装備
ビッグボアエンジンは、低中速域重視のOHCでもキック始動に難儀する。その対策としてデコンプ機構を持たせるバイクも多いが、KL600Rでは機能を自動的にオンオフできるオートデコンプ機構を採用。DOHCながらOHC以上の始動性とエンジンストールした際の早期再始動に貢献させた
1984年モデル KL600Rの主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,230×865×1,210(㎜) |
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軸間距離 | 1,490㎜ |
シート高 | 860㎜ |
乾燥重量 | 134㎏ |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ 単気筒・564㎤ |
ボア×ストローク | 96.0×78.0(㎜) |
最高出力 | 42㎰/7,000rpm |
最大トルク | 4.7㎏f・m/5,500rpm |
燃料タンク容量 | 11ℓ |
タイヤサイズ | (F)3.00-21(R)5.10-17 |
価格 | 51万8,000円(税込み・当時) |
KAZU 中西
1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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