ヨシムラ
スーパーネイキッドの先駆者たるZ1000。テイスト重視が主流だったネイキッド界に、高い運動性能と斬新なデザインで斬り込んだが、その切れ味の鋭さは2010年モデルにおいても健在どころか、さらに研ぎ澄まされている。
確実に進化した野性味と走行性能
エンジンやシャーシをスーパースポーツモデルからゆずり受けるスーパーネイキッド。Z1000も例外ではなく、エンジンを始めとしてパーツそのものは基本的に専用設計ではあるものの、多かれ少なかれZXシリーズからの影響は受けている。先代Z1000はZX-9Rのエンジンをベースにしていたし、フルモデルチェンジとなったこのモデルもZX-10Rの影響は受けている。しかし、新型Z1000が従来とは違うのは、最高出力や最高速といった“数値上のパフォーマンス”から決別し、“ストリートでスポーツする快感”を追求して開発されたことだ。そのため、各部設計はスーパースポーツとは違った作りこみやセッティングがなされている。では新型Z1000をいくつかのパートに分けて見ていこう。
まずはエンジンだ。ボア×ストロークは77×56(㎜)とされ、先代Z1000の77.2×50.9(㎜)、Ninja ZX-10R(2010年モデル)の76×55(㎜)に比べてボアは中間的な数値だが、ストロークは最も大きくされている。これはストリートファイター的な性格を重視し、常用回転域のトルクを太くしていることを表す。またエアインテークをサイドフェアリング上に設置し、加速時の吸気音をライダーの耳に届きやすくしているのも憎い演出だ。性能を最重視するならば高速域での過給効果が期待できるラムエアシステムを導入するところだろうが、あえて採用していない。
次はシャーシだ。鋭い切り返しと、コーナーへズバッ!と進入できるよう高い一次旋回性能を求め、ねじれ剛性をアップさせたアルミツインチューブフレームを採用。速度域や路面状況を問わず、ビシッ!とした剛性感の高いハンドリングの実現を目指す。ZX-10Rと同様にメインチューブをエンジン上側にとおすことで車体横幅を狭め、ニーグリップのしやすい形状を目指した。またリヤフレームは、先代のスチール製2ピースからアルミダイキャスト製3ピースに変更、軽量化とマスの集中化に貢献している。そして、エンジンをストレスメンバーとしているのも注目したい部分だ。いわゆる、エンジンにもフレームの一部としての役割をはたしてもらう構造だ。レーシングマシンでは常識ともいえる設計だが、金属の塊であるエンジンで十分な剛性を確保できるため、他の部分を軽量化でき、結果的にマスの集中化も期待できる。
カワサキ“Z”の代名詞であるマフラー4本出しは、一貫してZ1000で採用されてきたデザインであり新型でも採用されている。マフラー総重量は2009年モデルと大きく変わらないが、プレチャンバーの採用によりサイレンサーの大幅な小型化ができ、マスの集中化および低重心化に貢献している。
そして、なんといってもスタイリングだ。ボリュームあるフロントセクションからスリムなリヤセクションへと強い抑揚をつけながらつながっていく、その攻撃的なデザインは、物陰でひそかに今か今かと獲物をねらう肉食獣を思わせる。新型Z1000は、まさにストリートを駆け抜ける洗練された野獣といえるだろう。