美的スタイルに秘めた走行安定性／W650(2008)

スムーズに回るエンジンと安定した旋回性能

エンジンを始動。バーチカルツインにキャブトンマフラーというと、パルス的で重厚な排気音がイメージされるが、W650の排気音は非常に静か。また、走り出してしまえば、4気筒エンジンと同様とまではいかないまでも、エンジンの振動も非常に少ない。この振動を鼓動というなら、その鼓動はごく低回転で感じられる。そして、出だしはこの鼓動とともに、バーチカルツインエンジンの燃焼室で発生している爆発の一発一発が車体を前に押し出している感覚が伝わってくる。

エンジン回転の上昇は非常にスムーズで、レッドゾーンをやや超えた8,000rpmまで、谷もなくキレイに回転する。パワー感があるのは5,000~6,000rpm付近。この域からスロットルを開けると、車両がグッと力強く前に押し出される。いくらレトロなスタイルとはいっても、そこは現代の650㏄クラスのバイク。高速道路での追い越しも素早く完了できる。街をゆっくり流すのに似合う印象もあるW650だが、その気になれば高速域からの加速感もよく、意外とスポーティな走りを見せてくれるのだ。

また、ハイスピード域からのブレーキもしっかりと効く。フロントがシングルディスクブレーキで、リヤがドラムの組み合わせは、ブレーキレバーを強く握ってもガツンと効くわけではなく、ジワっと減速する印象だ。

コーナリングはフロントホイールが19インチということもあって、さすがにクイックな旋回性能というわけではない。タイトなコーナーでもジワっと車体が傾き、旋回していく。しかしそれでいて、自分がねらったラインは、タイトなコーナーでもしっかりとトレースしてくれるのだ。このような旋回性能ゆえに、妙に切れ込んだりすることもほとんどなく、安心感さえある。また、アールの大きい中速から高速コーナーでは、とても安定している。まるでレールの上を走っているように、スムーズにコーナーを抜けていくかのようだ。

レトロなスタイルを持ったW650は、なごやかなフォルムで、どこか安心感があるが、それだけのモデルではない。その気になれば、スポーティな走りだって可能なのだ。

>>> 次ページ カラーバリエーションと主なスペック