ヨシムラ
テクノロジーの真価を広域にわたって体感
さてエンジンだが、こちらも車体同様にライダーに忠実な特性となっている。わずかなスロットル操作に対して、いきなりエンジンが反応するのではなく、スロットルを開けた分だけジワっと加速するようなイメージ。それでいて鈍重な印象はなく、トルクがパワーバンドより下の6,000rpmくらいから出ていて、スロットル操作に対して力強く加速してくれる。ここで、中低回転域からリニア感が出ると、高回転域での加速力が薄れてしまうのではと懸念されるところだが、このNinja ZX-6Rはそんなことはまったくない。高回転域までしっかりとエンジンが回り、それにともなって力強く加速していく。もちろんスロットル全閉から開けたとき、インジェクションに見られがちなギクシャク感もない。
フロントを基点に自在に曲がれる、コイツはまさにコーナリングマシン
このようなエンジン特性がゆえに、コーナリングでもストレスなくスロットルを操作できる。コーナリング途中、ここから加速させたいと思ったポイントからスロットルを開けると、思いどおりの加速を得ることが可能。そして、それは何もエンジン特性だけで実現できたものではない。コーナリング中にリヤタイヤに駆動力がかかっても、接地感をたもったまま車体がギクシャクすることなくグイグイ前に進んでいく。これは、スロットル操作にリニアに反応するエンジン特性と、バランスよく仕上がっている車体がうまく融合、そう…、パッケージングがいい車体だからこそ実現できたコーナリング特性といえる。こいつは大きな武器だ。まさに新しいNinja ZX-6Rはコーナリングマシン。フロントを基点として自在に操ることができるマシンだ。
ここまでかなり突き詰めた話をしてきた。というのも、このNinja ZX-6Rで今回のようなサーキット走行をすると、“これならどうだ”と、ついつい攻め込みたくなってしまう。それでもこのマシンは、破綻をきたすことなくラインをトレースしてくれる。だからこそ、ここまで突き詰めた話もしたくなるというもの。そしてこのマシンの進化は、プロのライダーがサーキットで限界走行をしたときにだけ感じられるものではない。一般ライダーがワインディングを走っても、十分感じられる進化なのだ。というのも、突出した部分にかたよって進化させたわけではなく、極低速域から高速域まで、広範囲にわたってポテンシャルを上げてきているからだ。
明らかに技術は進化している。しかしそれだけでなく、とことん攻め込むことができる扱いやすい車体を体感すると、近年のカワサキ開発陣の考え方の進化も感じざるを得ない。
2009年モデル Ninja ZX-6Rのライディングポジション
2009年モデル Ninja ZX-6Rの主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,090×710×1,115(㎜) |
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軸間距離 | 1,400㎜ |
シート高 | 815㎜ |
車両重量(装備) | 191㎏ |
エンジン形式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒・599㏄ |
ボア×ストローク | 67.0×42.5(㎜) |
最高出力 | 94.1kW(128㎰)/14,000rpm[欧州・豪州] 92.7kW(126㎰)/13,500rpm[北米] 87.5kW(119㎰)/12,500rpm[マレーシア] 78.2kW(106㎰)/14,000rpm[フランス] 98.5kW(134㎰)/14,000rpm[ラムエア加圧時/欧州・豪州] 97.1kW(132㎰)/13,500rpm[ラムエア加圧時/北米] |
最大トルク | 66.7N・m(6.8㎏-m)/11,800rpm[欧州・北米・豪州・マレーシア] 60N・m(6.1㎏-m)/11,000rpm[フランス] |
タンク容量 | 17ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17・(R)180/55-17 |