ヨシムラ
スーパーチャージドエンジンを搭載するNinja H2に、ツアラータイプのNinja H2 SXとその上級仕様であるNinja H2 SX SEが登場。その技術に注目すれば、スポーツツアラーとしての魅力と、公道での扱いやすさを期待させて余りあることがわかる。
バランス型のスーパーチャージャーとは!?
ツーリングユースにフォーカスしたNinja H2 SXは、Ninja H2の基本設計を踏襲しながらも、ねらいに合わせて、エンジンも車体もすべてが見直され、専用設計を受けている。
とくに注目すべきは、バランス型スーパーチャージャーの採用だ。このバランス型スーパーチャージャーは2015年東京モーターショーで参考出品されており、燃費や性能とのバランスを図りながら、過給圧を綿密にコントロールする。
スーパーチャージドエンジンの圧縮比は、過給によって新気が充填されるため、低く設定されるのが一般的で、事実、Ninja H2の圧縮比は8.5と低めである。だが、それがSXでは11.2となっている。過給への依存度を抑え、適時、必要に応じて過給するということだ。
吸排気ポートは絞られ、スロットルバルブ径も50mmから40mmに小径化されていて、流速を高めて扱いやすさを向上させるねらいも見て取れる。
燃費も25%向上し、エンジン特性も、アグレッシブなNinja H2に対し、Ninja H2 SXはジェントルでスムーズなものになっていると期待でき、この分野でのカワサキのアドバンテージを誇示してくれそうだ。
ライディングポジションから車体ディメンジョン、車体の剛性バランスまで、ねらいに合わせて最適化されたNinja H2 SXは、スポーツ性能から快適性や燃費まで、バランスの取れたスポーツツアラーというわけだ。
Ninja H2 SXシリーズ
Ninja H2 SXシリーズには、スタンダートタイプのNinja H2 SXとハイグレード仕様のNinja H2 SX SEの2種類が用意される(2019年モデル)。下の表に示されるように、SEにはコーナリングライト、ローンチコントロール、オートシフター、TFTカラー液晶ディスプレイなどが装備され、SEだとオプション設定のセンタースタンドやグリップヒーターなども標準装備となる。だが、走りの基本的な機能や性能面での差異はない。Ninja H2 SXのカラーはメタリックカーボングレー×メタリックマットカーボングレーの1色のみ。
Ninja H2 SXとNinja H2 SX SEの主な装備比較
Ninja H2 SX | Ninja H2 SX SE | |
---|---|---|
KLCM | × | ○ |
KQS(UP⁄DOWN) | × | ○ |
液晶ディスププレイ | LCD | TFTカラー |
コーナリングライト | × | ○ |
KLCM | × | ○ |
ブレーキホース | ラバー | スチールメッシュ |
12Vソケット | オプション | ○ |
ラージスクリーン | オプション | ○ |
センタースタンド | オプション | ○ |
グリップヒーター | オプション | ○ |
タンクパッド | オプション | ○ |
ニーパッド | オプション | ○ |
装備[EQUIPMENT]
Ninja H2 SX/SEは、最新鋭のスポーツツアラーだけに、電子制御面でもIMU(慣性計測ユニット)で検知したマシンの運動状態よって、車体やエンジンを総合的にコントロールするシステムが導入されている。また、装備面でも最高位のツアラーらしく充実しているが、Ninja H2 SX SEのほうが、さらに充実したものとなっている。
コーナリングライト
カワサキ車初となるコーナリングライトは、独自の方式によるもの。左右それぞれのライトに3つのLEDを内蔵し、バンク角に応じた最適のライトを点灯させるというもの(写真のように浅いバンク角では上側のみの点灯となる)。これによってコーナーでバイクが進む方向を照らすことができる。
メーター
メーターの基本デザインは両タイプで異なる。Ninja H2 SXがモノクロのLCD式であるのに対し、Ninja H2 SX SEにはTFT液晶のフルカラーディスプレイが採用され、美しく高品位でフラッグシップにふさわしいものとなっている。また、情報もグラフィックカルに表示され、ライダーが必要な情報を把握しやすくしている。
車体[CHASSIS]
車体はNinja H2を基本としつつ、全面的に改められている。フレームは基本を受け継ぐも、トラス部に補強を追加し剛性アップ、強固なリヤフレームが一体化される。低重心化のために、エンジン搭載角を2度前傾させるなどしている。
ライディングポジション
比べてみると、Ninja H2はもちろん、Ninja ZX-14Rよりも上体が起き、Ninja 1000よりは少々前傾しているイメージだ。ライディングポジションが快適指向であることに変わりはない。足着きはNinja H2と同等か、わずかに劣る程度で、悪くはない(身長:161cm 体重:57kg)
オプションパーツ
Ninja H2 SXとNinja H2 SX SEには多くのオプションパーツが用意されている。とくにGIVIパニアケースは、片側容量28ℓで重量5kg、空力特性やマスの集中化も考慮され、着脱性にもすぐれる。SX SEの場合でも標準装備ではないので、用意したいパーツだ。
Ninja H2 SX/SE(2019年モデル) スペック一覧
車名(通称名) | Ninja H2 SX | Ninja H2 SX SE | |
---|---|---|---|
マーケットコード | ZX1002AKF | ZX1002BKF | |
型式 | 2BL-ZXT02A | ||
全長x全幅x全高 | 2,135mm×775mm ×1,205mm |
2,135mm×775mm×1,260mm | |
軸間距離 | 1,480mm | ||
最低地上高 | 130mm | ||
シート高 | 820mm | ||
キャスター/トレール | 24.7°/103mm | ||
エンジン種類/弁方式 | 水冷4ストローク並列4気筒 / DOHC4バルブ | ||
総排気量 | 998cm3 | ||
内径x行程/圧縮比 | 76.0mm×55.0mm/11.2:1 | ||
最高出力 | 147kW(200PS)/11,000rpm ラムエア加圧時:154kW(210PS)/11,000rpm | ||
最大トルク | 137N・m(14.0kgf・m)/9,500rpm | ||
始動方式 | セルフスターター | ||
点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | ||
潤滑方式 | ウェットサンプ | ||
エンジンオイル容量 | 4.7L | ||
燃料供給方式 | フューエルインジェクション | ||
トランスミッション形式 | 常噛6段リターン | ||
クラッチ形式 | 湿式多板 | ||
ギヤ・レシオ | 1速 | 3.076(40/13) | |
2速 | 2.470(42/17) | ||
3速 | 2.045(45/22) | ||
4速 | 1.727(38/22) | ||
5速 | 1.523(32/21) | ||
6速 | 1.347(31/23) | ||
一次減速比 / 二次減速比 | 1.480(74/50) / 2.444(44/18) | ||
フレーム形式 | トレリス | ||
懸架方式 | 前 | テレスコピック(倒立・インナーチューブ径 43mm) | |
後 | スイングアーム(ニューユニトラック) | ||
ホイールトラベル | 前 | 120mm | |
後 | 139mm | ||
タイヤサイズ | 前 | 120/70 ZR17M/C 58W | |
後 | 190/55 ZR17M/C 75W | ||
ホイールサイズ | 前 | 17M/C×MT3.50 | |
後 | 17M/C×MT6.00 | ||
ブレーキ形式 | 前 | デュアルディスク320mm(外径) | |
後 | シングルディスク250mm(外径) | ||
ステアリングアングル (左/右) |
30°/ 30° | ||
車両重量 | 256kg | 260kg | |
燃料タンク容量 | 19L | ||
乗車定員 | 2名 | ||
燃料消費率(km/L) | 27.0km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時) | ||
17.9km/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時) | |||
最小回転半径 | 3.1m | ||
カラー | メタリックカーボングレー×メタリックマットカーボングレー(GY1) | エメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラック(GN2) | |
メーカー希望小売価格 | 199万8,000円(税込) | 239万7,600円(税込) |
和歌山 利宏
バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。