ヨシムラ
2019年の東京モーターショーで、最も注目を浴びたと言っても過言ではないバイクがカワサキのNinja ZX-25Rだ。採用するメカニズムに対する衝撃、市販するすごさ。驚異の新型とはまさにこのモデルだ。勢いとどまらないカワサキの進撃を見た。
大きな話題を呼んだ時代の常識を覆す新型
“カワサキが250cc並列4気筒モデルを出す”と、かねてから噂されていた。現在、250ccクラスのフルカウルスポーツモデルには並列2気筒エンジンが採用されていることが多い。それゆえ、カワサキの250cc並列4気筒エンジン発表の噂は話題を呼んだ。
その噂は東京モーターショーで現実となり、“本当にカワサキが出した!”と衝撃が走った。モデル名はNinja ZX-25R。現在ラインナップ、または市販が予定されている250ccクラスで、唯一の並列4気筒エンジン採用車となる。多くの報道陣が囲むターンテーブルの上でヴェールがはがされ、瞬く間にSNSやウェブでアップされた。常識を覆したNinja ZX-25Rは、バイク関連サイトの他、ヤフーニュースやツイッターのトレンドにもアップされるほどだった。
留まらない250cc旋風。新たな驚異の刺客
注目されたのは、やはり並列4気筒エンジンだ。カワサキが250cc並列4気筒エンジンを量産車に採用するのは、2007年までラインナップされていたバリオスⅡ以来のことで、他社を含めて、久々の採用となる。
ただ、Ninja ZX-25Rの驚異はエンジンだけにとどまらない。まるでリッタークラスの装備かと思える車体や電子制御機能も非常に魅力的だ。コスト削減の傾向が強い今の時代、最先端技術を存分に盛り込んだモデルを市販するカワサキに大きな拍手を送りたい。国内導入は2020年秋を予定していて、市販が今から待ち遠しい。
Ninja 250とは別モノ
250ccフルカウルスポーツモデルを代表モデルするNinja 250。扱えるスポーツ性能と高級感あるデザインが魅力だが、Ninja ZX-25Rはひとまわり上の走行性能とデザインを追求して開発された。Ninja ZX-25Rに採用される機能は、Ninja 250とはまったくの別モノで、デザインも共通性を持たせつつも、差別化を図っている。開発者いわく、両者は同じ250ccフルカウルスポーツだが、まったく別のラインに位置していて、競合車種にはならないとのことだ。
川崎重工業開発者からのメッセージ
高回転型エンジンを扱い切る快感
今の250ccフルカウルモデルよりワンクラス上のライディングを楽しめるモデルを開発することが、ZX-25Rの要件だったのです。だからZX-25Rは、今の250ccクラスとしては、非常に贅沢なモデルなんです。並列4気筒エンジンを採用したほか、電子制御機能もかなり充実させています。250ccではめずらしくオートシフター、トラクションコントロール、電子制御スロットルも採用していますからね。
エンジンと車体は完全新設計で、このうちエンジンは1万7,000rpmからレッドゾーンが始まる高回転型に設定しています。なんといっても魅力は“ぶん回せる”楽しみです。高回転まで“シュイーン”といい音を出しながら、エンジンが軽快に回っていきますよ。
カワサキの250cc水冷並列4気筒エンジンというと、ZXR250やバリオスのエンジンを思い浮かべる人もいると思いますが、当然ZX-25Rのエンジンの方がよくできています。その一例が低回転域のエンジン特性です。Ninja ZX-25RはZXR250やバリオスと同じく高回転型エンジンですが、低回転を犠牲にしていません。低回転ではなめらかさを持たせつつ、高回転まで軽快に回るエンジン特性に仕上げています。
だから、Ninja ZX-25Rでは、サーキットはもちろん、ストリートでもエンジンを使い切る快感を味わうことができるでしょう。バイクの魅力の一つに、車両をコントールする楽しさがありますよね。Ninja ZX-25Rではエンジン、車体、電子制御など、豪華な装備を気軽に楽しむことができるんです。
デザインに関しては、ニンジャシリーズのファミリーデザインを取り入れています。とくにヘッドライトまわりには同じイメージを持たせています。そのニンジャ共通のイメージを持たせつつ、よりスポーティなデザインとしています。クラウチングスタイルのようなフロントが低めのデザインとしていて、実際、ライディングポジションはNinja 250より前傾になっています。
仕向地は現在、日本と東南アジアを予定しています。価格はまだ決まっていませんが、Ninja ZX-25Rは機能と装備がかなり充実しているので、既存の250ccモデルより高額になると思います。ただ、価格がプラスになっただけのさらなる楽しみは、きっと体験できるでしょう。
参考までに、Ninja ZX-25Rの“25R”の読み方は、公式ではトウェンティ・ファイブ・アールです。(川崎重工業・開発者)
SFF-BPとは
現在、ZX-6Rに採用されているフロントフォークが持つ構造で、セパレートファンクションフォーク・ビッグピストンの略。セパレートファンクションの文字が示すように、フロントフォークの左右が独立した機能を持つ。ZX-6Rに採用されるSFF-BPでは、片側にプリロードアジャスター、もう片側にダンピングアジャスターを装備する。また、ビッグピストンと称されるように、大径のダンパーピストンを採用することで、フォークオイルの接触面積が大きくなり、少ない荷重でストロークや減衰が発生する。これらの構造を採用することで、ストロークをスムーズかつリニアに作動させ、ブレーキング時やコーナリング時に車体安定させることを追求している。
並列4気筒のパワーユニット
Ninja ZX-25Rは、現在の250ccクラスでは唯一の並列4気筒エンジン採用モデルとなる。採用するエンジンは完全新設計であり、ZXR250系並列4気筒エンジンをベースとしたものではない。低中回転の豊かなトルクと、高回転域での強力なパワーを両立させている。
ZXR250のパワーユニット
次世代スポーツモデルを徹底的にねらって開発が進められた。250ccクラスでありながら、当時としては高性能技術が存分に投入され、メーカー渾身のエンジンだった。レッドゾーンが1万9,000rpmからはじまる超高回転型エンジンで、2万rpmまでバルブバウンスを発生させないように、N次コサインカムという特殊なカムプロフィールを持つカムシャフトを採用していた。
Ninja ZX-25Rの主なスペック
エンジン種類/弁方式 | 水冷4ストローク並列4気筒/DOHC4バルブ |
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総排気量 | 249cm3 |
内径×行程 | ─ |
最高出力 | ─ |
最大トルク | ─ |
全長×全幅×全高 | ─ |
シート高 | ─ |
車両重量 | ─ |
燃料タンク容量 | ─ |
フレーム | トレリス、ハイテンスチール |
フロントサスペンション | SFF-BP(Separate Function Fork – Big Piston) |
リヤサスペンション | ホリゾンタルバックリンク |
フロントブレーキ | シングルディスク、ラジアルマウントモノブロックキャリパー |
タイヤサイズ | (F)110/70-17 (R)150/60-17 |
電子制御 | KTRC(カワサキトラクションコントロール) KQS(カワサキクイックシフター) パワーモード |
カラー | ライムグリーン×エボニー |