2018年モデル Ninja 250インプレッション
ニンジャ250の走りは、まさに軽量級レーシングマシンを彷彿とさせる。回転数を高くたもち、人車一体でコーナリングラインをトレースしていく。そんな軽量級マシンならではのおもしろさを堪能できるのだ

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ヨシムラ

Ninja 250が登場して早10余年。その近代250スポーツのパイオニアが大きくモデルチェンジされ、スケールアップ版の400も新登場。その軽量級ニンジャ兄弟は、目指す走りが見事に異なり、それぞれにおもしろさを主張していた。

新しい軽量級ニンジャは250と400の2本立てで登場

2018年モデルでのNinja 250のモデルチェンジとNinja 400の新登場は、ミドルクラスの市場にちょっとした変革をもたらすのではないだろうか。それほどまでにエポックメイキングな出来事だと思えてくる。

Ninja 250は2008年に登場し、今日の250スポーツの市場を開拓。2013年に大きなモデルチェンジを受けたものの、そのエンジンは1985年のGPZ250Rを基本に発展したものであった。そのパイオニアが満を持して再び大きくモデルチェンジされたことが、まず一つのエポックだ。もう一つのエポックはNinja 400の存在である。これまでの国内向け400ccモデルは650がベースだったのだが、今回は250と基本を共用しているのだ。

国内で400というと、各メーカーとも昨今は欧州向け600〜650ベースのものがほとんどであるわけだが、これが250ベースとなったほうが、パワーウェイトレシオも低くなり、はるかに魅力的になることは明らかというものである。

海外市場に目を向けても、欧州向きにはNinja 300が用意されていたわけだが、これが400とあれば、はるかにスポーツ性が期待できよう。さらに言うなら、日本のガラパゴスレギュレーションだった400cc区分が、グローバル化されるという意味でも画期的ではないか。そう考えると、カワサキに拍手を送りたい気分なのである。

2018年モデル Ninja 400 インプレッション

軽量級レーサーの250、正統派スポーツの400

新しいNinja 250とNinja 400が一卵性双生児であることは、スタイリングや車体構成から明らかというものである。

ただ、エンジンはNinja 250とNinja 400で基本は同じでも、両方を最適化するため、ほとんどを専用設計としているという。

実は、そうしたこだわりを反映しているかのように、エンジンもハンドリングもキャラクターは別モノで、おまけに、それぞれがマッチング形ときている。ある意味、基本が同じとは思わせない。その事実にいたく感心させられることとなった。

もちろん、またがると両車のライディングポジションは変わらず、昨今の過激化するライバルの250と比べて、従来どおりアップライトなもので、一般使用でもストレスは感じない。ただ、Ninja 400は諸元上の車重が1kg重いだけなのに、またがって車体を足で支えたときに、ズシッと重さを感じないでもない。まあ、その程度の違いである。

2018年モデル Ninja 250インプレッション

ストリートのような状況でのNinja 250は、従来型同様オールラウンダーである。無理のないライディングポジションやストレスのない走りは、足代わりに使えて、遠くへも足を伸ばせる

両者の持ち味の違いは排気量だけではない

ところが、いざ走り出すと、両車はそれぞれのキャラクターをあらわに主張し始める。

Ninja 400は、車体が250然と軽量コンパクトなだけに、低中速がトルクフルなことにワクワクしてくる。

対してNinja 250は、5,000rpm以下のトルクは薄く、それ以上に回して乗ることが求められる。従来型よりも低速トルクがなく、高回転型なのではとの気がしないでもない。

でも、それは、強化された高回転域からすると相対的に下がないと感じるためだろうか。いや、同時に乗った400と無意識に比べてしまうからかもしれない。比べるつもりはなくても、身体が片方の特性を覚えてしまうと、それを基準に見てしまいがちだからである。

ただ、低速域が非力であっても、つながりは悪くなく、このトルク特性に慣れれば、公道において使い勝手は悪くなく実用的である。

そして、サーキットを走り出すと、両車のエンジン特性の違いは、さらに明らかになってくる。

最高出力はNinja 250が39psで、Ninja 400が45psだから、最高速度に絶対的な差があるわけではない。ところが、Ninja 400のほうが最高速域には早く到達することができる。

そればかりか、Ninja 400だと乗り方のいかんにかかわらず最高速への到達に大差がないのに対し、Ninja 250は、コーナーで適切なギヤを使い、高回転域をキープできるようにコーナーを回らないと、そこからのスピードの乗りが大きく違ってくる。

これぞ、軽量級マシンを乗りこなすおもしろさである。つまり、新しいNinja 250は軽量級レーシングマシン的なキャラクターを、従来型よりも明確にしているのだ。中高回転域のトルクが弱くなったわけではないにしろ、ピーク域が劇的に増強された結果、それを活かすには、それ相応のテクニックが求められるということだ。

これからすると、Ninja 400のトルク特性は、ロードスポーツとしてのセオリーに則ったものだ。トルクの上昇カーブに乗ってトラクションをつかんで出口を目指し、ワイドレンジなピークパワー域で立ち上がっていくのである。

ハンドリングも、こうしたエンジン特性に合わせて、ライディングスタイルが異なってくる。

やはり、Ninja 250は軽量級レーシングマシンのようである。リヤタイヤがワンサイズ細いこともあろうが、大きく身体を動かすことなく、一体感をたもったままラインをトレースしていくことになる。大きく身体を動かしてもロスになるだけで、実際、コンパクトな身体の動きで、よく曲がってくれる。

これからすると、Ninja 400はエンジン特性がそうであるように、ライディングスタイルもロードスポーツの一般的なセオリーどおりである。曲げて、腰を入れてリヤに荷重して立ち上がっていくリズムも明確なのだ。サスペンションのセッティングもそうした荷重コントロールにマッチングしたものとなっている。

このように、ベースが同じでも、まったく違ったバイクに乗っているかのように楽しめるのである。

では、Ninja 250とNinja 400のどちらが楽しいのか。はっきり言って、それは愚問というものだろう。走っていてライダーが追求するものが異なっていて、楽しさの種類が違うからだ。個性が見事に作り分けられていることも見事なのである。

Ninja 250・400 ライディングポジション

2018年モデル Ninja 250 足着き

Ninja 250(キャンディプラズマブルー)

2018年モデル Ninja 400 足着き

Ninja 400(メタリックスパークブラック)

Ninja 250とNinja 400でライディングポジションは共通である。アップライトで何にでも使えるワイドレンジな印象で、従来までのモデルの持ち味は変わらない。足着きは私の身長161cmだと両カカトがわずかに浮いてしまうが、良好であることには変わりがない。ただ、Ninja 400は車重が1kg重いだけなのに、傾いた車体をまたがって起こすとき、わずかにズシッと重く感じる。とはいえ、そのことが実走時に気になることはない(身長:161cm 体重:57kg)

走行サーキット・オートポリス

オートポリスサーキット(大分県)

大分県日田市にあるオートポリスは1990年に開設されたサーキットで、全長4,674m。全日本ロードレース選手権も開催され、2005年以降はカワサキがテストコースとして使用している。中速コーナーを主体としたテクニカルコースで、走って楽しいコースでもある。最寄の空港は熊本空港だが、大分空港や福岡空港からもアクセスは悪くない。

[Ninja 250/Ninja 400]東京モーターショー2017で世界初披露! すべてが生まれ変わった2018年モデル登場

問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
和歌山 利宏

バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。




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