ヨシムラ
スポーティ化によって旅力はどう変わった?
ワインディングを走っていると、ライディングポジションの差がさらなる違いを生んでいることに気付いた。スタンダードが高めのハンドルを操作しコーナーへ向かって車体から先にねじ込むように倒していくのに対し、Z900RSカフェはハンドルを上から押さえてフロントに荷重をかけつつライダーから先にコーナーに飛び込んでいくような感覚がある。つまりZ900RSカフェはライダーが積極的にコーナーリングを行なう、よりスポーツ性を持たせた特性になっている印象なのだ。
そして、それにはシート高も影響している。ライダーの着座位置が高いということはバイクの重心も高くなるということ。高い位置でライダーが体重移動すると車体もよりダイナミックに動く。ゆえに大柄なリッターネイキッドを体全体で操る豪快なフィーリングが得やすいのだろうと考えられる。
低回転域から太いトルクを発生させる直列4気筒エンジンの持ち味を活かしながら大小のコーナーをスムーズかつ豪快に駆け抜ける。スーパースポーツのように神経をとがらせて走行しなくてもスポーツ走行の醍醐味が味わえるキャラクターは、スポーツライディング好きにとっても好ましいものだった。
カフェレーサールックとツーリングの相性は良好
高速道路に入るとビキニカウルが効果を発揮する。もちろんフルカウルほどの防風性能はないが、それでもカウルがないよりずっといい。また軽い前傾ポジションは前からの風に対抗するのにも向いている。それぞれわずかな差ではあるが、長時間の高速道路走行では疲労度が大きく違ってくる。そういったことからもZ900RSカフェの方が長距離ツーリングしやすいと言えよう。
1000kmを順調に走り抜け編集部に戻ったとき、疲れ方がスタンダードモデルとは異なることを感じた。スタンダードでは低めのシートとステップ位置との距離が近いことから、僕の体型だと足の付け根が痛くなってしまった。ところが着座位置が20mm高いZ900RSカフェではそれが起きなかった。その代わりに断面形状が台形になったシートの角が太ももの内側に当たってしまい、やや痛みを感じた。うまくいかないものだなぁと思ったが、総合すると僕の場合、長距離ではZ900RSカフェの方が疲れにくいと感じたのは間違いない。
まとめ
走行前はビキニカウルの有無による違いが大きいだろうと考えていたが、実際に走ってみるとハンドルとシートによるポジションの違いのほうが走行フィーリングや疲労度に大きく影響したという意外な結果になった。何より今回のロングランで2台のキャラクターが明確に異なることを実感することができたことが大きな収穫だ。
以上のことから考えると、Z900RSはハンドルやシート、ステップなどを変えてポジションを調節することで、スポーツ走行向けやツーリング向けなどの特性を持たせやすいバイクだということになる。双方のパーツの組み合わせ以外にも、オプションで発売されているハイシートや社外製のステップなどを使うことで、その調整幅は大きく広がっていく。Z900RSはカスタムの効果がリアルに体感できるバイクであるとも言えるのだ。
取りまわし
引き起こし
シート快適性
乗り降り
排気音
燃費
高速道路 | 26.34km/ℓ |
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一般道路 | 19.55km/ℓ |
ガソリン満タン航続距離 | 332.5km |
たそがれ度
Z900RSカフェ
Z900RSカフェの主なスペック
年式 | 2019年モデル |
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全長×全幅×全高 | 2,100×845×1,190(mm) |
軸間距離 | 1,470mm |
シート高 | 820mm |
車両重量 | 217kg |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒・948cm3 |
ボア×ストローク | 73.4×56.0(mm) |
最高出力 | 82kW(111ps)/8,500rpm |
最大トルク | 98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm |
燃料タンク容量 | 17ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17・(R)180/55-17 |
価格 | 135万3,000円(税10%込) |
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。