2019年モデル Z400(ER250DKF)

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ヨシムラ

ニンジャ400/250のネイキッド版となるZ400/250が登場した。それは、ニンジャならではの軽量でスポーティに楽しめるポテンシャルを忠実に引き継ぐとともに、熱く駆る喜びを期待させるZらしさに満ちあふれていた。

同時開発を思わせる一卵性4兄弟

期待どおり、いや通例どおりとしてもいい。1年あまり前に市販されたニンジャ400/250と基本構造を同様とした、ネイキッドタイプのZ400と250の登場である。

ニンジャ400/250は、このカテゴリーにおいて大変に画期的なバイクである。それは、400と250というそれぞれの排気量クラスにおいて、軽量パッケージングを実現し、スポーティな世界を実現したことに留まらないからだ。それぞれが排気量に見合った個性を主張、魅力的な完成形なのである。ニンジャ250は軽量スポーツらしいおもしろさにあふれ、ニンジャ400はミドルクラスらしく動力性能と運動性能が高次元にバランスされている。片やメインで片やお下がりといった印象など一切ない。

それでいて、両車が基本構造を共用していることに驚かされる。おそらくは、開発において両車の接点を探っていったのではないだろうか。その意味で、同時開発を思わせたものである。

そして、新登場のZである。1年あまり遅れての後発だけに、完成したニンジャ400/250をベースに作り込まれたものと考えられる。

ところが、これらはニンジャ400/250の単なるネイキッド版だとは思えない。Zらしさを高次元に主張し、ニンジャ400/250で走ったときのおもしろさを、そのままネイキッドで堪能できる。それどころか、ここのタイトなワインディングには、Z400/250のほうがすんなり溶け込んでいく。

おそらくアップライトでコントローラブルになったライディングポジションのおかげだろう。やや開き気味のハンドルに積極的に働きかけやすいことが、持って生まれた素性を昇華させているに違いない。ニンジャ400/250ではレーシーなキャラクターを、ライディングポジションで寛容にしているとするなら、こちらのZ400/250のほうが自然体だとさえ思えてくるほどである。

それだけではない。わずかに車両姿勢が調整されているのか、少々ながら車体ディメンションが最適化されている。また、ハンドル切れ角が広げられたことで、取りまわしやすく、妥協のない作り込みを思わせる。

とは言え、ニンジャとして開発させたものに、アレンジの手を入れただけでは、ここまで完成度を高めることはできなかったのではないか。ニンジャとZの250と400という4兄弟が、時を同じくして生を受けていたと思えてならないのだ。

2019年モデル Z250(ER250EKF)

ザッパーそのものの両車のキャラクター

ともかく、Z400/250に乗って印象的なのは、ザッパーと形容されるZらしい元気よさである。決して過敏なわけではない。安定感のなかに、意志どおりに俊敏な運動性を取り出せるのである。だから、走っていておもしろい。

ただ、両車のハンドリングは性格が異なる。タイヤがニンジャ400/250と同じく、Z400がラジアルで、Z250はバイアスだからだ。バイアスとラジアルの特徴がここまで如実に現れていることに、このZ400/250の素性のよさを見る思いでもある。

ラジアルのZ400は、リヤタイヤが幅広なこともあって、コーナリング開始でのフロントの内向性が強めで、その内向性を逃がさないように荷重をかけると、高い回頭性を発揮する。そして、スロットルを当ててリヤに荷重を移していくと、タイヤがたわんでトラクションを伝えながら曲がっていく。その流れがスムーズにつながり、コーナリング速度も速い。

だからと言って、バイアスのZ250がつまらないわけでない。そればかりか、むしろおもしろさが勝っていると言えないでもない。タイヤからフィードバックが、“つぶれ感”を介することなく、ダイレクトに“間”がなく伝わってくるので、日常域での操っている感が途切れないのである。幸い、リムサイズは両車共通なので、好みでタイヤを変えることもできる。楽しみ方をアレンジできる可能性もあるわけだ。

車体構成の基本は同じながら、250もZらしさは負けない

エンジンは両車とも、公道に順応しやすい特性であることを、改めて思い知らされる。ニンジャ400/250をサーキットで試乗したとき、ワイドレンジながらもサーキット走行をも重視していると感じたものだが、ここまで公道で使えて現実的な特性だったとは感心だ。

とくにニンジャ250は、サーキットでは4000rpm以下のトルクが薄いとの印象もあったのだが、スロットルを開ければトルクがわき出てきて、か弱さはない。

ここのタイトなワインディングでは、レスポンスが小気味よい4000rpm以上をキープすることになるが、それでも低回転域から使えるワイドレンジぶりである。

ニンジャ400の場合でも、さほど使う回転域は変わらない。加えて減速比の違いから、ニンジャ250だと同一速度で走行中の回転域が数100rpm高くなることも手伝って、両車ではコーナーを同じギヤ段数でこなすことになり、また動力性能の差をさほど感じることはない。

高速道路や流れの速い自動車道路を使ってのツーリングや移動では、Z400の動力性能に分があることは確かでも、街中やタイトなワインディングならZ250でもハンディなく、十分に楽しめそうだ。ベーシックモデルとしての輝きを思わせるライトウェイトZなのである。

両車はスタイリングもウリ二つ

2019年モデル Z400(ER250DKF)

Z400

2019年モデル Z250(ER250EKF)

Z250

Z400/250は、1年あまり前にモデルチェンジされたニンジャ400/250と基本構造を同様とするネイキッド版である。Z400とZ250は、車両姿勢の違いから車体ディメンションはわずかに異なるも、1,370mmのホイールベースは同じ。車両重量はカウルレスになったことでニンジャ400/250より1〜2kg軽くなるが、基本をそのまま継承する。塗色は、Z250は写真のホワイト/ブラックとレッド/ブラック、Z400は写真のグリーン・ブラックとホワイト/ブラックが用意される。

2019年モデル Z250(ER250EKF)

Z250

2019年モデル Z400(ER250DKF)

Z400

標準タイヤはZ400がラジアルのGPR300で、Z250はバイアスのGT601。前輪は同じサイズでも、後輪はZ250の140/70に対し、Z400は150/60と幅広だ。ホイールサイズは4.00-17で共通

2019年モデル Z250(ER250EKF)

Z250

2019年モデル Z400(ER250DKF) サイレンサーの長さ

Z400

マフラーはそれぞれの排気量に合わせた専用設計品。エキゾーストパイプは、Z400はφ28.6mmのストレート径だが、250はφ25.4〜31.8mmのテーパ式。また、Z400のサイレンサーは大型となっている

ライディングポジション
2019年モデル Z400(ER250DKF) ライディングポジション

ライディングポジションはアップライトな自然体。ハンドルはやや開き気味ながら小柄な体にも無理なく、積極的な走りに導かれそうな雰囲気が漂う。諸元値ではZ250のほうがZ400よりシート高が10mm高いが、その差は分からない(身長:161cm 体重:57kg)

ミラー後方視認性
2019年モデル Z250(ER250EKF) ミラー後方視認性

車両の約5m後方に立った和歌山を、バイクにまたがったカメラマンがミラー越しに見た図。内側の3分の1が肩に隠れてしまうが、実際には乗車姿勢の自由度が高く視認性を悪いとは感じない

2019年モデル Z250(ER250EKF) ヘッドライト(ハイ)

ハイ

2019年モデル Z250(ER250EKF) ヘッドライト(ロー)

ロー

新設計のLEDヘッドライトはシャープな外観にも貢献。ローで上側のみが点灯する。高光量で照射範囲も広く、視認性にすぐれる。ライトの上側にはメーターバイザーが設けられる

2019年モデル Z250(ER250EKF) メーター
2019年モデル Z250(ER250EKF) メーター
2019年モデル Z250(ER250EKF) メーター

メーターパネルはZ650に準じている。回転計はアナログタイプで、表示モードを写真のように3つから選択できる。また、ギヤ位置表示と、その下に多機能液晶スクリーンを備える

2019年モデル Z250(ER250EKF) シート下
2019年モデル Z250(ER250EKF) シート下

タンデムシート下の収納スペースは2段式として、利便性を向上させている。上段にはETC車載器の搭載が可能で、下段には純正アクセサリーのU字ロックを収納することができる

Z400の主なスペック

全長×全幅×全高 1,990×800×1,055(mm)
軸間距離 1,370mm
シート高 785mm
車両重量 166kg
エンジン 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列2気筒・398cm3
ボア×ストローク 70.0×51.8(mm)
最高出力 35kw(48ps)/10,000rpm
最大トルク 38.0N・m(3.9kgf・m)/8,000rpm
燃料タンク容量 14ℓ
タイヤサイズ (F)110/70-17(R)150/60-17
価格 66万7,440円(税8%込)

Z250の主なスペック

全長×全幅×全高 1,990×800×1,060(mm)
軸間距離 1,370mm
シート高 795mm
車両重量 164kg
エンジン 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列2気筒・248cm3
ボア×ストローク 62.0×41.2(mm)
最高出力 27kw(37ps)/12,500rpm
最大トルク 23N・m(2.3kgf・m)/10,500rpm
燃料タンク容量 14ℓ
タイヤサイズ (F)110/70-17(R)140/70-17
価格 59万7,240円(税8%込)
問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
和歌山 利宏

バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。




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